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熊本地震「本震」1年 福祉避難所の教訓

2017年04月16日 09時45分

熊本地震では福祉避難所に地域の人が大勢避難し、周知不足が浮き彫りになった=2016年4月下旬、熊本県益城町の特別養護老人ホーム「ひろやす荘」
熊本地震では福祉避難所に地域の人が大勢避難し、周知不足が浮き彫りになった=2016年4月下旬、熊本県益城町の特別養護老人ホーム「ひろやす荘」

■「弱者専用」知らず住民続々

 熊本地震の「本震」発生から16日で1年がたつ。二度の激震に見舞われた被災地では当時、高齢者や障害者ら「災害弱者」が十分な支援を受けられないケースが相次いだ。経験が熊本や佐賀でどう教訓化されようとしているのか、現状と課題を見つめる。

 足元から突き上げるような衝撃だった。2016年4月16日午前1時25分、14日の前震よりも大きな揺れが寝込みを襲う。熊本県益城町の特別養護老人ホーム「ひろやす荘」。2度目の震度7を観測した本震の震源は、施設の近くだった。

■通路にまで

 施設は町に5カ所ある福祉避難所の一つ。このうち1カ所が被災して使えなくなる中、築3年の施設は一部損壊で持ちこたえた。町内の本震直後の避難者は約1万人。福祉避難所は、一般的な避難所での生活が困難な高齢者や障害者向けの専用施設だが、このことを知らなかった周辺の住民が続々と押し寄せた。

 「命からがら逃げ込んでくる人たちを、『ここは福祉避難所ですから』と追い返すことなんてできなかった」と施設長の永田恭子さん(51)。結局、受け入れた住民は入所定員を上回る200人以上になり、通路にまで人があふれた。

 福祉避難所は1995年の阪神・淡路大震災の際、高齢者らが避難所で十分なケアを受けられない事例が相次いだため考案された。国は全国の自治体に対し、バリアフリー化された公共施設や民間の福祉施設を福祉避難所として指定し、専用のスタッフや介護、衛生用品をあらかじめ手配するように求めている。

 佐賀県内では今年1月末現在、138施設が指定されているが、国の基準を満たす態勢が整っていないのが実情だ。佐賀市は47施設のうち31が民間施設で、ある施設で働く男性は「入所者がいるので大量に受け入れるのは難しいし、備品はどこが用意するのかも分からない。何もかもぼやっとしている」と話す。

■機能を分ける

 熊本市は、福祉避難所の運営方法を行政と施設の担当者しか理解していなかった反省から、設置訓練の充実を図る。永田さんも「地域の人を交えて訓練をすれば存在を知ってもらえるし、各施設の具体的な課題が見えてくる」と話す。

 ただ、こうして一般の避難所と機能を分けることが現実的なのか疑問もある。地震後、介助が必要な人を元気な住民が支える光景を施設で目にした。「一般の避難所が福祉避難所の機能を併せ持つ形が、コミュニティーの在り方としてもベストなのかもしれない」

 3月まで伊万里特別支援学校に通っていた富永瑠美さん(18)=西松浦郡有田町=も同じ考えだ。熊本地震後、授業の一環で伊万里市内の小中学校と公民館の多目的トイレの設置状況を調べてみると、38施設中12施設で未整備だった。脳性まひで手足が不自由で、多目的トイレがないと避難所生活はできない。

 「大災害になると福祉避難所にたどり着けない人もいると分かった今、全ての避難所に多目的トイレを設置するくらいの考えで整備を進めてほしい。そうじゃないと、私たちの行き場がない」

=ズーム=

 熊本地震では、高齢者や障害者ら介助が必要な人の受け入れ先になる福祉避難所が十分に機能しなかった。熊本市は176施設を指定していたが、実際に福祉避難所として利用したケースは半数にとどまった。施設が被災したり、周知不足で一般住民が避難したりして受け入れる余地がなくなったのが要因だった。

=備える 支える 熊本・佐賀 災害弱者の視点=

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