第3次安倍第3次改造内閣がスタートした。新内閣の布陣を見ると、閣僚経験のある中堅・ベテランを集め、安定感を重視した「実務型内閣」という印象だ。これまでは抜てき人事が目立ったが、今回はそれほど奇をてらった人事はなく、なんとしても支持率下落を止めたいという安倍晋三首相の狙いが透けて見える。

 しかし、森友・加計(かけ)学園問題や南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報隠蔽(いんぺい)問題などで失った国民の信頼は一朝一夕では回復しない。謙虚に説明責任を果たす姿勢が求められる。

 19閣僚のうち5人が留任した。政権の要となる菅義偉官房長官と麻生太郎副総理兼財務相は続投。この2人をそのまま残したことで、首相としては冒険を避けた形だが、国民には「変わり映えがしない」と映るかもしれない。一方の初入閣は6人と少ない。

 注目の女性閣僚は2人で、野田聖子氏を総務相に据えたのが、サプライズ人事といえる。経済政策などを巡り、これまで安倍政権と距離を置いてきた野田氏は、2年前の自民党総裁選で立候補を模索。内閣の支持率が下がる中、野田氏の入閣で自民党内の幅広い人材を起用する姿勢をアピールし、挙党態勢の確立につなげる狙いがあろう。

 もう一つの目玉人事は、歯に衣着せぬ言動が持ち味の河野太郎氏が外相に就いたこと。PKO部隊の日報問題で、防衛省内の調査をやり直すよう求めたことでも知られる。首相とすれば、党内の幅広い意見に耳を傾けて政権運営に当たるイメージづくりを演出した形だ。

 省内が混乱した文部科学省と防衛省の大臣には、党内有数の政策通とされる林芳正氏と、安全保障政策に詳しい小野寺五典氏という閣僚経験者を充てた。文科省は天下り問題で幹部が処分され、国家戦略特区での獣医学部新設を巡り、内部で混乱があった。一方の防衛省も、PKO部隊の日報問題で大臣や次官らが辞任。ミサイル発射を繰り返す北朝鮮への対応も迫られている。いずれも早急に態勢を立て直すためには、実績のある、即戦力の人材起用が不可欠と判断したようだ。

 ただ、野党側から見れば、内閣改造をしただけでは、一連の問題の幕引きは認められないと言うだろう。体制を一新するだけで終わらず、丁寧な国会対応をするなど、引き続き国民の疑念を払拭(ふっしょく)する努力が必要だ。

 首相が強い意欲を示す憲法改正問題は今後の大きな政治テーマである。首相は秋の臨時国会で党独自の憲法改正案を提出すると明言した。しかし支持率の低下で、党内では年内のとりまとめが難しいとの観測も出ている。そこで、これまで以上に重要性を増すのが、党運営を仕切る三役ら幹部だ。

 二階俊博幹事長、高村正彦副総裁は再任させ、新しい政調会長には岸田文雄氏を起用。ハト派の岸田氏は憲法9条改正には慎重な姿勢を崩していないが、首相は党内のとりまとめ役を期待している。派閥の会長を務める岸田氏は安倍首相の後に政権を担う意欲を示しており、自らの信条に折り合いをつけながら、改憲問題をどう扱うかが注目される。国民世論を二分しかねないだけに、慎重で丁寧な議論が望ましい。(横尾章)

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