貿易自由化の潮流について解説するジェトロ海外調査部国際経済課の米山洋課長代理=佐賀市の佐賀商工ビル

 国内外の通商政策について考えるセミナー(ジェトロ佐賀、佐賀県主催)が2日、佐賀市の佐賀商工ビルで開かれた。ジェトロ海外調査部国際経済課の米山洋課長代理が、リーマンショック(2008年)後の世界貿易の動向について解説した。日本については自動車や食料品などの輸出が上向きになっており、貿易自由化の枠組みを利用するよう提言した。講演要旨を紹介する。

■保護主義の台頭注視を

 世界の貿易はリーマンショック(2008年)で低迷し、中国などが自国でモノを作るようになって停滞した。世界経済の成長は緩慢で、この状態がしばらく続きそうだ。

 では日本はどうか。東日本大震災直後は振るわなかったが、2015年の経常収支は5年ぶりに黒字幅が拡大した。最大の輸出相手国は米国で自動車輸出が伸びた。農林水産・食品輸出額も目を引く。7451億円と過去最高を記録、ホタテや和牛、緑茶が売れた。

 日本企業が海外に工場を造る動きは中国、東南アジアで広がった。地元企業との連携などが進み、国内で7割を占めた大企業の売り上げは、この20年で海外が6割を占めるようになった。関税を削減し、さらに利益を上げるのが貿易自由化であり、世界貿易機関(WTO)が1995年に設立された。昨年7月末で164カ国が加盟している。もう一つの自由化の潮流はFTA(自由貿易協定)だ。協定を結んだ国と国の間で関税などが撤廃され、中小企業にとってもコスト削減につながる。先日、EUがカナダと結んだが、交渉が難航した。ベルギー内の1自治体が強行に反対したためだ。日本とEUのFTAが実現間近といわれるが、欧州での保護主義の台頭を注視する必要がある。

 日本政府はFTAを基礎に投資を促進し、知的財産などの制度を調和させる経済連携協定を推進している。これがEPAで、日本は東南アジアなど1地域14カ国と発効済みで、東アジア(RCEP)など4地域4カ国と交渉中だ。

 日本が昨年2月に署名した環太平洋連携協定(TPP)は、GDPの合計で85%を占める少なくとも6カ国が国内法で手続きを完了しないと発効しない。このうち米国が60.2%だから、トランプ政権が賛同しない限り、実現は困難だろう。

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