トランプ米政権の経済・通商政策が日本企業に与える影響について語るジェトロの眞銅竜日郎理事=佐賀市の佐賀商工ビル

 トランプ米政権の経済・通商政策に関する企業セミナー(佐賀商工会議所、ジェトロ佐賀貿易情報センター主催)が7月26日、佐賀市であり、米国情勢に詳しい眞銅竜日郎ジェトロ理事(58)が講演した。同政権の保護主義的な政策を解説し、日本経済に与える影響について見通しを語った。

 「米国第一主義」を掲げるトランプ政権は、国内雇用を守るため就労ビザの発給を厳格化しており、日本企業の社員派遣が制限される可能性を示した。16日に始める予定の北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉では、日本の自動車メーカーの原料調達に影響が出る恐れがあると指摘した。

 ジェトロのニューヨーク・センター次長、シカゴ・センター所長などを歴任した経験を基に、トランプ政権の重要閣僚の横顔にも触れた。講演要旨を紹介する。

■講演要旨 眞銅竜日郎氏 ジェトロ理事 NAFTA再交渉に注視を

 「米国第一主義」を掲げるトランプ政権。4月に開かれた日本との経済対話では、ペンス副大統領が「TPP(環太平洋連携協定)は過去のものとなり、日本との2国間FTA(自由貿易協定)の正式交渉を始める」と表明した。さらに5月、日本から輸入している鉄鋼製品で不当廉売があった場合、制裁関税を課すと決めた。「米国の利益を損なうならば厳しい対応を取る準備がある」と次々と意思表示する姿勢は、この政権の特徴といえる。

 トランプ政権は、米国の雇用を重視する立場から、就労ビザの発給を厳格化した。IT技術者など特殊技能職の発給審査には時間をかけ、却下するケースが出ている。日本企業はこれまで貿易・投資駐在員のビザを申請してきたが、これも厳しくなってきそうだ。

 8月から始まる北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の動きを注視したい。交渉では国家間ではなく、業界間の利益を争う構図となり、日本企業に影響が出る恐れがあるからだ。

 米国とメキシコの鉄鋼業界が原産地規則の強化を要望し、地元の自動車工場に北米産鉄鋼を使うよう求める動きがある。これに対して米国、カナダ、メキシコの自動車業界団体が反発している。日本の自動車メーカーは日本産鉄鋼を使っており、メキシコなどに工場を持つ。とばっちりを受けないか動向を見守りたい。

 米国における日系企業の雇用者数は84万人。うち製造業は38万人と主要国では最多となっている。トランプ氏の支持者が多い五大湖周辺には18万人。さらに日系企業の輸出額は787億ドルで、全体の5%を占める。日系企業が米国に貢献していることを政権にアピールすべきだ。

 トランプ政権の閣僚は白人男性に偏る。軍人、経営者を重用し、「反オバマ」色が鮮明だ。次期駐日大使にはウィリアム・F・ハガティ氏が就く。テネシー州の経済開発責任者を務め、日産やブリヂストンを誘致した実績で知られる。お会いしたことがあるが、非常に実務的と感じた。関係者によると、8月中旬に訪日するという。

 ペンス副大統領とは、インディアナ州知事だった頃から親交がある。しっかりと話を聞き、正しい情報を大切にする思慮深い方だ。福島第1原発事故で日本の輸出品が風評被害にさらされた時、安全と訴える私の話を真剣に聞いてくれた。トランプ政権は実務を行う局長(日本でいう事務次官)がほとんど任命されていないだけに、政権のキーマンとして頑張ってほしい。

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