組織的な天下り問題が発覚し、文部科学省が激しく揺れている。省庁ぐるみで法の抜け道をつくるなど悪質で、歴代の人事課長らが国会に呼ばれ、追及を受ける醜態をさらした。現在、議論が進んでいる教育改革への影響も懸念されている。

 手口は極めて巧妙だ。現在の法律は現職公務員が就職活動に関わることを禁じており、同省で人事課在籍が長かったOB(67)が受け入れ先の大学や企業、団体との仲介役になっていた。人事課OBは国会で「民間人の立場で、人助けのつもりでやってきた」と釈明したが、実態はほど遠い。

 OBが理事長となる文教団体をつくり、事務所の家賃は文科省の補助金を受ける別の財団法人が支払っていた。秘書もこの財団から派遣を受けており、事実上の天下りの拠点となっていた。OBは団体からは無報酬とはいえ、民間保険会社の顧問を兼務し、月2回の出勤で、年収1千万円の報酬を受けている。

 文科省人事課もOBに退職予定者リストを渡しており、積極的な関与がうかがえる。省庁ぐるみのシステムができあがっていた。

 同省局長が早稲田大の教授に就任したことで天下り問題は発覚したが、内閣府監視委員会の調査を欺くために、大学側と口裏合わせをするための想定問答集までつくっている。教育行政の責任者たちが臆面もなく不正をやっていた姿を想像すると情けない。

 官僚たちにも老後の生活があり、退職後の就職先探しへの言い分はあるだろう。しかし、官庁は許認可権や補助金交付、契約行為を通じ、民間企業に強い影響力を及ぼす。官僚たちが現役時代につながりのあった業界に再就職すれば、公正さをゆがめる恐れがある。官民癒着の不祥事をなくすための天下り禁止を、文科省はどう考えていたのか。

 「月2回勤務、年収1千万円」の人事課OBのケースでいえば、仕事に対する報酬と思えないほど高額だ。企業側は国とのパイプ役を期待して、OB官僚にポストを用意することもある。内閣府監視委は早大教授以外でも疑わしい就職あっせんが28件あるとみているが、再就職先に補助金交付など便宜供与がなかったか、厳しく調べる必要があるだろう。

 今回の不祥事で、現在進められている教育改革が停滞する懸念がある。2020年度から学習指導要領の改定が始まる。目玉のアクティブ・ラーニングや小学生英語を成功させるには教員を増やす必要があり、それには予算が伴い、国民の理解が必要になる。

 改革を進めてきた官僚も不正に関与しており、辞職した前川喜平事務次官もその一人だ。若い頃から省内の期待を集め、小泉政権が義務教育費の国庫負担削減を打ち出したときは「クビと引き換えに義務教育が守れるなら本望だ。権益にしがみつく人間がクビをかけるようなまねはしない」とブログで政権批判をしたほどだった。

 そういう彼が文科省トップとして、省庁権益のかたまりとも言える天下りに関与したことはなんという皮肉だろうか。組織の悪しき慣行を維持するために、若き日の高い志も汚してしまった。教育行政への信頼を取り戻すためにも、今度こそ根深い天下り問題と決別したい。(日高勉)

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