<春は名のみの風の寒さや…>。「早春賦(そうしゅんふ)」に歌われるように、春が立っても、なごり雪に身が縮む。この時期、農家は麦踏みに余念がない◆今季の麦は、播種(はしゅ)期の長雨で苦心した農家が多いと聞く。麦の葉をしっかり踏むと茎が太くなり、根が張るので、倒れにくく丈夫に育つそうだ。3月上旬まで、人によっては5、6回踏む欠かせない農作業である。作付け全国3位の佐賀の風物詩◆昔は一家総出で行った。農家の生まれの筆者も、半世紀前は足で踏まされた。麦踏みは体が温まるから「ぬくもり仕事」と言って、寒さしのぎにはもってこい。今は乗用機械のローラーでするから、むしろ防寒をしないといけないようになった。「麦は踏んで作れ、コメは手間で作れ」-。昔からいわれることだが、麦は鍛えて伸ばすのである◆踏まれて強くなるのは、人も同じ。つらいことに耐えることで、強い心が育つ。若い時期には特にそうである。10代が経験する試練の一つが受験だ。高校生にとっては私立大の入試がまっただ中で、国立大の前期試験も迫る。中学生はおととい県立高の特色選抜試験が終わり、本番の一般選抜は3月初旬◆勉強に、健康管理にと気持ちは不安定かもしれない。受験は楽しいことではないが、つらくても今は辛抱だ。耐えてこそ、人生の幹は太くなり、花が咲く。(章)

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