皇居・宮殿で開かれた昼食会に臨まれる天皇陛下=9日午後(代表撮影)

視察のため、石川県立いしかわ特別支援学校に到着された皇太子さま=9日午後、金沢市

■祈りの半生に親近感 ゆかりの人々、慰労と未来へ期待 

 天皇陛下の退位を実現する特例法が9日、成立した。即位以来、象徴として新時代の皇室の在り方を体現してこられた陛下。膝を折って被災者に寄り添い、戦没者を慰霊して平和を願う姿が人々との距離を縮めた。「祈りの半生」に親近感を抱いた人は多い。各地で接した人、同じ時代を生きた人から、共感や感謝の言葉が続いた。

 皇室にゆかりのある人々からは、天皇陛下の活動をいたわり、未来の皇室に期待を膨らませる声が上がった。

 陛下の前立腺がん手術を取り仕切った日本対がん協会の垣添忠生会長(76)は「心臓のバイパス手術も受けた上でよく活動されてきた。そろそろお休みになってよい時期だ」と、体を気遣う。

 ハゼの研究で30年以上交流のある中坊徹次京大名誉教授(67)は、全国で人々と直接対話してこられた陛下の姿勢を「人任せにせず、自ら探求を重ねる研究への向き合い方とも通じている」と話す。

 歌人の岡井隆さん(89)は「和歌が象徴としての行為の一部とお考えだろう」。和歌への親近感は、皇太子さま、秋篠宮さまにも引き継がれていると感じている。

 皇后さまの役割を強調するのは児童図書の編集者末盛千枝子さん(76)。「人々との交流や読書でアンテナを広げ、陛下から意見を求められることもあるのではないか」

 元学習院OB管弦楽団副団長鎌田勇さん(89)は約20年前、陛下に「勤め先には定年はあるの」と問われた。「あります。陛下にはありませんね」と返すと、「まあ、そうですね」。寂しそうな表情に見えたという。「即位の見通しが立ったことを皇太子さまは前向きに受け止めているはずだ。新しい天皇像をつくられると思う」と未来を思い描く。

 皇居でのスケッチで両陛下と交流のある画家安野光雅さん(91)は「陛下は『象徴天皇』という肩書を持った『人間天皇』。早く自由になって、余生を楽しんでいただきたい」と話した。

 未来を担う皇太子さまの振る舞いを「自然体で、構えない」と表現するのは、水問題に関する相談相手で元建設省河川局長の尾田栄章さん(75)。「相手をすーっと信用させて話をお聞きになる。お代が替わっても、天皇としての一番基本のところは変わらないのではないか」

 皇太子妃雅子さまは児童福祉への関心が深い。児童養護施設の名誉学園長高橋利一さん(78)は雅子さまが、豊かな国でも親に養育されない子どもがいて、背景に貧困の問題があることへの懸念を話していたことを覚えている。「聡明(そうめい)な方だと思うので、新しい時代の天皇となる皇太子さまの支え役として一層のご活躍を期待したい」【共同】

 

■県内でもいたわる声 皇室の課題「論議深めて」

 天皇退位を実現する特例法の成立を受け、改めて陛下をいたわる声が佐賀県でも聞かれた。皇族の減少や皇位継承の在り方など課題は残るものの、陛下と同世代の人たちからは今後の論議に期待する声が上がり、平成生まれの若者からは時代に合った仕組みづくりを求める意見も挙がった。

 「陛下には一日も早く肩の荷を下ろしてほしいから法律ができてよかった」。杵島郡江北町の小林文子さん(82)は特例法を歓迎する。戦後60年目に両陛下が訪問されたサイパン島が生まれ故郷。「追悼や平和のため、体にむちを打って頑張ってこられたけど、80歳を超えたら歩くだけでも大変」とねぎらい、皇室を巡る課題については「戦後そうだったように、時代が変われば天皇観も変わる。次の世代がじっくりと話し合ってほしい」と話す。

 皇居で謁見(えっけん)した経験がある元伊万里市議会議長の前田教一さん(81)も両陛下の戦地巡礼の旅に触れ、「戦争を知る最後の世代として身の引き締まる思い」といたわる。その上で、少子高齢化が進む中で、皇室も同様であることを実感させた昨夏の「お気持ち」の表明を振り返り、「問い掛けをしっかり受け止めなければ」と、さらに議論を深める必要性を指摘した。

 「自分の生活とはかけ離れた存在。でも、丁寧な言葉遣いや表情から平和を連想させる」。平成生まれの大学生遠藤瑞歩さん(18)=佐賀市=は「象徴天皇」にそんな印象を抱く。

 「被災地へのご訪問の様子を見ると、接している人たちが元気をもらっているのがテレビ越しでも分かる」。三養基郡基山町の自営業靏健寿さん(28)はこう感じ、元号が変わっても天皇は、同様の存在であり続けてほしいと願う。

 「退位を巡る一連の報道は、若い世代が考えるきっかけになった」。佐賀市内で外国人向けのゲストハウスの店長を務める高瀬伶さん(24)はこう受け止めている。その上で「これまで築き上げた伝統を守ることは大切だけど、存続が難しいのであれば、時代に合わせた柔軟な対応も求められるのでは」。女性宮家の導入などさまざまな選択肢を検討すべきという考えを示した。

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