山から噴き出した泥水があふれる道を必死に歩く住民=7月5日午後6時21分、福岡県朝倉市の黒松・真竹集落(町田秀紀さん提供)

 九州北部の豪雨から5日で1カ月。福岡県朝倉市の山あいにある黒松・真竹集落の住民らは、記録的な大雨が襲った7月5日の午後、避難情報や救助の手が届かない中、独自の判断で自らの命を守った。土砂降りの雨、濁流に足を取られて山中をはだしでさまよった10時間。町田秀紀さん(45)のスマートフォンには、死の恐怖と闘いながら撮影した写真31枚が残る。【共同】

 写真は、5日午後2時すぎから日没が迫る午後7時までを記録。山から噴き出す泥水の勢い、住民の緊迫した様子を伝える。災害発生直後、救助隊も到着していない孤立集落の極限状態を捉えた貴重な資料だ。

 午後6時21分撮影の一枚には、急流のようになった道を必死に進む住民の姿が。左手の斜面はいつ崩れてもおかしくない。「早くこの場を離れたいのに、足は思うように動かなかった」。準備した着替えや食料を捨て、泥が入って重くなった長靴も脱ぎ捨てた。足は傷だらけになった。

 危険を察知して避難を呼び掛けたのは区長だった。市が避難勧告を出す2時間以上前の5日正午すぎ。十数人が約2キロ先の避難所を目指したが、土砂に遮られた。別の道を進んだが、途中で橋が流れ落ち、7人がやむなく引き返した。市中心部から約10キロ離れた山奥で、自衛隊や消防の救助は望めない。次々と起きる土砂崩れを避け、安全な場所を探し続けた。鉄骨造りの小屋に逃げ込んだときは、午後10時を過ぎていた。

 猛暑が続く被災地の一部では、道路や護岸の復旧作業が徐々に進む。だが、集落に続く道は今も土砂や流木で覆われ、ほぼ手付かずの状態だ。「誰も気にしないような小さな集落だから、取り残されるのではないか」。町田さんはつぶやいた。

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