国土交通省武雄河川事務所が、六角川水系の30年余りの治水対策によって、浸水戸数が最大で100分の1に減少したとする数字をまとめた。大きな効果だが、近年多発している記録的短時間豪雨を考えると十分とはいえないという。6月には同水系の洪水想定も見直されている。さらなる治水対策と防災計画見直しを急ぎたい。

 治水対策効果の分析手法は、今年6月の大雨被害と、同規模の雨量を記録した1980年8月と93年8月の被害を浸水戸数と浸水面積で比較した。

 今年の数値は、流域平均で6時間に127ミリの雨が降り、46戸、340ヘクタールが浸水。80年は105・3ミリで4835戸、5400ヘクタール、93年は108・2ミリで876戸、1600ヘクタールが浸水した。今年は比較した2年より雨量は多かったものの、浸水戸数は80年より100分の1、93年より20分の1に減少。浸水面積も15分の1と5分の1程度に縮小した。浸水被害が解消されたわけではないが、規模は大幅に縮小しているようだ。

 大雨による浸水被害の原因は、河川の越水や堤防決壊による外水氾濫(はんらん)と、水はけ悪化による内水氾濫がある。外水氾濫は堤防のかさ上げ、川の掘削や拡幅などの河川改修で対応。内水氾濫は排水機場(ポンプ)増設や調整池整備などで改善するのが中心という。

 今回の分析で浸水の原因に目を向けると、80年は外水と内水の複合被害、93年と今年は外水被害はなく、内水だけの被害だった。80年と93年を比べると、河川改修によって越水や堤防決壊が防げたことで被害が軽減され、93年と今年は内水被害対策が奏功したといえそうだ。

 浸水被害が減ったとはいえ、武雄市では今年の大雨で冠水や道路の通行止めが多発した。床上浸水世帯の後片付けを手伝う機会があったが、水が増す前に家電や家具、畳を上げていても、壁や床、動かせなかった家具をふき、水びたしになった畳下の板を50枚以上外して洗って干さなければならなかった。床下を消毒して乾燥を待ち、畳を元に戻すまでに3週間近くかかった。浸水常襲地域の苦労は思った以上だ。被害を避けるために100万円以上かけて家屋を高めた世帯があることも聞いた。治水対策の重要性を実感した。

 武雄市の神六山を源とし、県中央部を流れる六角川水系では、近年の治水工事で堤防かさ上げなど河川本体の改修が総延長41・2キロにわたって施されている。内水氾濫を軽減する排水機場の数は93年時点の9機場から16機場に増えている。これから、武雄市東川登町の採石場にできたくぼ地を調整池にする事業も行われる計画で、6月には地権者会も発足し、境界を確定する作業が始まっている。

 武雄河川事務所によると、六角川水系では1990年7月、流域平均の6時間で251・6ミリの雨を記録した豪雨があるという。今年の雨量の2倍の量だ。河川改修で浸水被害は減少しているが、万全ではなく油断はできない。

 今年6月、6時間の最大雨量を424ミリに引き上げた新たな洪水想定が発表された。被害規模は「最大で5~10メートル浸水し、1週間近く続く」と予測された。治水事業を進めると同時に、防災・避難計画の見直しも急ぎたい。(小野靖久)

このエントリーをはてなブックマークに追加