海外に発送する商品。文具が人気で、肥後守や瓶詰めの金平糖(左下)も

ビルの一室に本社兼作業所を構える吉村鑑さん(左)。右はセミナー講師を務める熊谷朋柔さん=糸島市前原中央の「シンプルトレーディング」

 海外向けのインターネット通販「越境EC(エレクトロニック・コマース)」が地方でのビジネスに新たな可能性を生み出している。新規起業だけでなく、国内の需要不振で苦しむ地場中小企業や伝統産業が世界市場に参入する道にもつながる。唐津市出身の若手起業家が開設した越境EC会社は、創業4年目で年間1億8千万円を売り上げ、九州でトップクラスに成長した。

 福岡県糸島市の国道202号から旧商店街に入ったビルの1階、35坪(115平方メートル)のフロアに文具や生活雑貨が積み上げられている。吉村鑑(あきら)さん(36)が代表社員を務める合同会社「シンプルトレーディング」の本社兼作業所だ。

 子育て中の主婦ら約10人が伝票を見ながら商品を梱包する。ルーマニアに「炭配合の歯みがき」、ドイツへは「たまごっち」。取引相手は基本、個人消費者で、海外向けECモールから注文を受けて発送する。

 吉村さんは唐津東高から九州大法学部、京都大大学院に進み、ベンチャー企業を経て2012年に越境ECの同社を設立。円安を追い風に売り上げは13年=3千万円▽14年=9千万円▽15年=1億8千万円と、「倍々」の成長を続ける。

 経済産業省によると、越境ECでの日本からの購入額は14年の推計で米国が4868億円、中国が6064億円で、中国の市場規模拡大が見込まれる。ただ同社は「中国は大手が入っていて、手数料など参入障壁も高い」として、為替リスク分散の狙いもあって取引先は米国と欧州が各4割、中東、インドなどが2割。英語やスペイン語が堪能なスタッフもいる。

 人気商品は、高品質とされる文具事務用品やキッチン用品、玩具、菓子などで、欧米の愛好家向けに日本の伝統品にも着目。肥後守(ひごのかみ)(和式ナイフ)や福岡・上野焼の盆栽鉢、唐津焼なども扱い、地場中小零細事業所を対象にした越境ECコンサルタントも始めた。

 「肥後守がそうだが、市場が大きいだけに一度火が付くと爆発的な売り上げになる」と吉村さん。家賃が安く、緩やかな勤務体制で主婦も働きやすいことなど地方の利点を挙げ、「地域の伝統産業の再生をサポートできたら」と協業にも意欲を見せる。

■6日、唐津でセミナー

 越境EC会社「シンプルトレーディング」の別会社「アジアンドア」スタッフの熊谷朋柔(くまがいともなり)さん(31)を講師に招いたセミナーが、8月6日午後3時から唐津市大手口センタービル3階会議室で開かれる。

 まちづくり会社「いきいき唐津」が運営する「カラツ大学」のベンチャー応援講座。「ゼロから始める越境ECのすすめ」をテーマに、需要の増大が見込まれる越境ECの可能性とノウハウについて、初心者にも分かりやすく解説する。

 受講料千円で定員30人。終了後、午後5時半から交流会(会費3千円)も。申し込み、問い合わせはカラツ大学実行委員会、電話0955(72)3278。

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