政府の経済対策が大筋でまとまった。「アベノミクスのエンジンをもう一度、最大限にふかす」という安倍晋三首相の決意を受けて、28兆円という大規模な対策になる。

 安倍首相は27日の福岡市の講演で「28兆円を上回る」とぶちあげた。市場予想の20兆円をはるかに上回り、2008年のリーマン・ショック以降、3番目に大きい。

 キーワードは「未来への投資」。リニア中央新幹線の大阪延伸を最大8年前倒しし、低所得者向けに1万5千円を給付、建設国債を積み増して公共事業を実施するなどのメニューを盛り込んだ。

 これで道半ばのアベノミクスが、いよいよゴールに向かうのかと期待も高まるが、どうも実態は違うようだ。つぶさに見れば、看板の見栄えに比べて、中身がいかにも乏しいからだ。

 通常は経済対策には含めない地方自治体の支出まで盛り込んだ上、国の債務とは見なされず、実際に融資がなされるかも分からない「財政投融資」の枠組みまで含めている。さらに、一部には来年度予算の分まで足し合わせるなど、大きく見せかけるために、相当な無理を重ねたのが分かる。

 実質的な「真水」部分は、わずか6兆円。つまり、見かけの4分の1の規模でしかないわけだ。

 今回の目玉政策のひとつが、低所得者層への1万5千円の現金給付である。これは本来、消費税を引き上げたのに伴って低所得者層の痛みを和らげるのが目的だ。家計を下支えし、消費の底上げを見込んでいるというが、どれほど消費に回るかは疑わしい。

 景気刺激策として挙げた公共事業にしても目新しさはない。すでに東日本大震災の復旧・復興事業で建設業界は全国的に人手が不足し、資材は高騰している現状がある。この状況でさらに公共事業を投じたところで、どれほどの効果を引き出せるだろうか。

 気がかりなのは、財政規律のたがが緩んでいないかという点だ。今回は赤字国債ではなく、建設国債を増発するというが、建設国債であれ、将来世代に返済させる借金であるのは変わらない。

 日本はすでに1千兆円規模という、世界でも例がない借金を抱えている。この上、国債頼みの財政運営を進めるのは、未来への投資どころか、未来への債務つけ回しでしかない。

 アベノミクスをめぐっては、その恩恵が大企業や富裕層に偏っているという批判がつきまとってきた。最大の課題は、個人消費をどうてこ入れするかではないか。

 消費税10%への再増税見送りは、熊本地震や英国の欧州連合(EU)離脱もあって、国民的支持は得られただろう。だが、増税による財源で立て直すはずだった社会保障制度の改革は先送りされてしまった。

 個人消費を慎重にさせているのは将来の暮らしへの不安だ。持続可能な社会保障制度をしっかりと整えて、家庭の不安を取り除くことが、ひいては個人消費の下支えにもつながるはずだ。

 政府の方針と連動するように、日銀も追加の金融緩和を決めた。来月3日には内閣改造も控える。ここは経済優先で布陣を固め、未来に向けた社会保障制度の安定、そして個人消費の拡大に注力すべきだ。(古賀史生)

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