棚田が広がる中山間地の風景を守ろうと決意を新たにする田代西部ファームの西山利治代表(右)ら=鳥栖市河内町

 抜いても抜いても生えてくる雑草の隙間から小さな芽が顔を出した。漢方薬で解熱・鎮痛作用があるとされる希少薬草の「ミシマサイコ」。生育を祈るような思いで見守ってきた「田代西部ファーム」(鳥栖市)のメンバーは、安堵(あんど)の笑みを浮かべた。

 河内ダム近くの標高約200メートルの中山間地域。今年から耕作放棄地となった水田に、玄海町の薬草園から取り寄せた種を4月にまいた。除草剤の使用を抑えなければならず、雑草との戦いだが、集落を闊歩(かっぽ)するイノシシの被害の心配はなく、「10アール当たり40万円程度」(JAさが)の高収益が見込めるという。

 「この薬草がゆくゆくは地域を支えてくれる」-。江戸時代、全国に名を知られた「田代売薬」の拠点だった歴史もあり、西山利治代表(67)はブランド化も見据えて力を込めた。

 構成員82人で、経営面積55ヘクタールと平均的な規模だが、対象地区は田代本町など国道沿いの平たん地から河内町など九千部山系まで7町の広範な領域にまたがる。2014年4月から法人化に向けた議論を重ねたが、機械利用の効率化の観点などから、平たん地と中山間地で分離独立し、別々の道を探る意見もあった。

 「地域が川でつながっている以上、上流の中山間地が荒れると、平地でも良くないことが起きる」と西山代表。「今まで一緒にやってきた仲間を切ることはできない」と、互いに支え合う道を選び、昨年9月に法人として動き始めた。

 とはいえ、法人化で求められるのは経営体質の強化だ。中山間地農業の厳しさは現実として重くのしかかる。河内町を歩くと、山の中腹に連なる棚田の所々に虫食いのように耕作放棄地が点在し、イノシシがほじくり返した穴や伸び放題の雑草も目立つ。

 住民の高齢化で農作業を集落外の農家に委託するケースが増えているが、現状を維持するのが精いっぱいというのも事実。法人で中山間地の耕作を任せる人材を雇用することも検討課題となる中、薬草をはじめとする収益事業は、今後の地域農業の存亡をかけた挑戦となる。

 このほか、中山間地に適した高収量の飼料米栽培や、平地での高品質米の研究にも手を広げる。

 「『中山間地を抱えているから弱い』と言われたくない。地域の農業が強くなったということを結果で証明していかないと」と西山代表。仲間とともに、川上から川下までのすべてを守り育てる決意を固めている。

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