「筆の力具合など、見本通りに描くのが職人」と、筆先に集中する天ケ瀬正成さん=有田町の今右衛門窯

今右衛門窯の作品を手にする天ケ瀬さん。絵の具のすり方や自分に合った筆の作り方など、窯の先輩職人に「一から教えてもらった」と話す

■見て覚えることが大事

 絵付けの勉強を始めたのは20歳を過ぎてから。高校の商業科を卒業後、東京で会社勤めをしていたが、父の病気をきっかけに帰郷。佐賀県窯業試験場(現窯業技術センター)の研修を受講した。

 色鍋島の名窯、今右衛門窯に入った時の当主は、有田で最初の人間国宝(重要無形文化財保持者)となった先代の十三代今泉今右衛門さん。花を生き生きと表現する線の柔らかさや丸みのつけ方など、さまざまなことを教えてもらった。

 窯に務めながら通った佐賀県陶磁器工業組合の研修では、現代の名工の円田義行さんや秀島輝馬さんらの教えも受けた。名だたる職人の指導を受けながら、分からないことは積極的に尋ねることを心掛けた。「他の人より遅いスタートと自覚していたから。一生懸命やらないと追い付けないと思った」と振り返り「何人ものすごい技術を持つ人に教えてもらった。本当に先生に恵まれた」と感謝する。

 「技術は見て覚えることが大事」と何度も繰り返した。十三代の指導を受けるときは、常に傍らにスケッチブックと鉛筆を用意し、実際に描いてもらいながら話を聞いた。筆の運びが分からないときは先輩職人の手の動きをじっくり見せてもらった。「言葉だけではよく分からない感覚が理解できる」と観察する大切さを説く。

 同時に経験を重ねることも大事という。「同じ物を何個作ろうと、見本通りの色や線にするのが職人。そのためには何度も何度も身に付くまで繰り返すしかない」と話す。

 自らも一員の「色鍋島今右衛門技術保存会」は国の重要無形文化財保持団体。「仲間でありライバルでもある」同じ窯の若い職人たちに、見て覚えた技術を見せて伝えることも仕事の一つと考えている。

 職場での仕事は上絵付けだが、伝統工芸士の試験は下絵付けで受けた。下絵付けを学ぶことが上絵付けの技術向上につながると考えたからだ。「本当は下絵付けをとった後に、上絵付けの試験も受けようと思っていたんだけど、いつの間にか還暦を超えたので、どうしようかなと思っている」

 あまがせ・まさなり 1956年有田町生まれ。伊万里学園高(現敬徳高)卒業後、会社勤めを経て1980年今右衛門窯に入社。1999年伝統工芸士(下絵付け)認定。勤務先=今右衛門窯

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