<くものある日/くもは かなしい/くものない日/そらは さびしい>。日本の近代詩が生み出した最高の抒情詩人ともいわれる八木重吉(1898~1927年)の「雲」という詩である◆クリスチャンで、結核のため29歳で夭折(ようせつ)した。短い詩が多く、繰り返し「かなしみ」をうたった詩人だった。この雲の詩も、天を仰いで人間の存在のはかなさと雲を重ねているのかもしれない◆雲にのどかさを感じる人もいれば、雲が出てきて不安を感じる人もいる。トランプ米大統領は、さしずめ後者の方だろう。ロシアによる米大統領選への介入とトランプ陣営との癒着に関するロシアゲート疑惑。これを巡って渦中のコミー前連邦捜査局(FBI)長官が、大統領による捜査中止要請があったと明言した◆事前に上院に提出した書面にはトランプ氏が捜査を、垂れ込める「雲」になぞらえて大統領執務の障害になる、自分とロシアには何の関係もないとして「この雲を一掃してほしい」と語った、とある◆証言はトランプ氏に打撃には違いないが、受けた方も黙っておらず、反撃の右ストレートでも出す勢いだ。大統領弾劾まではハードルもあり、疑惑の解明は特別検察官の捜査次第となる様相。これから先は世論の動向が鍵を握るだろう。雲の上には天がある。雲が払われても、天は見ている。(章)

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