太い筆でだみの作業をしながら「細かな作業も好きだけど、線のメリハリをつける大胆な絵柄も挑戦したい」と話す北島頼子さん=有田町の香蘭社赤坂美術品工場

今年2月に伝統工芸士に認定された北島頼子さん。工場では線描きやだみを担当する

■伝統の蓄積に感動

 子どものころから絵を描くのが好きで、自信もあった。見本通りに花を描いているつもりだったある日、職場の先輩から助言を受けた。「一つの花でもふわふわふわと描くところと、しっかり描くところがあるんだよ」

 花弁は柔らかく、支えるがくは力強く、線の強弱を意識すると「見違えるほど生き生きとなった。もっと描けるようになりたいと思った」。花の向き、葉脈の方向など、さまざまな草花の表現方法を学んだ。松を描いていたある日、唐津市の虹ノ松原で間近に観察した。「枝や幹の質感が有田の伝統の描き方通りだった」と、先人たちが積み重ねてきた技法の蓄積に感動を覚えた。

 下絵付けには、生地に花や鳥を描く線描きと、線描きの中を青の染料で塗るだみと呼ばれる作業がある。有田では、だみは伝統的に女性が中心だった。「母も祖母もだみの仕事をしていた。楽しそうに作業する祖母の姿を子どものころから見ていたのが、焼き物に携わるようになった理由の一つ」と振り返る。

 だみの技術は「ハスの葉の露を転がすように」と言い伝えられる。作業に当たるときは、筆先が生地に当たらないように気を配る。「筆が当たると跡が付く。生地に落とした絵の具を引っ張る感じ」と、「紙1枚分くらい」生地と筆の間を開ける。

 色の濃淡も注意が必要だ。「色の重ね方のちょっとした違いで違ってくる。何年も経験しているのに、焼き上がりを確認するときは、どきどきする」。うまくできないときは退職した先輩にやり方を聞きに行くこともある。「商品を作る以上、見本通りに仕上げないとプロといえない」。微妙な濃淡、線の位置など、丁寧に作業を進める。

 技術を習得し、目標としていた伝統工芸士の試験に挑んだが、一度目は不合格。最初は落ちこんだが、もう一度腕を磨き直した。「試験の講評は足りない部分の指摘だらけ。『なにくそ』と思った」と、再度挑戦した昨年の試験で見事合格。失敗をバネに成長できたと実感する。

 伝統工芸士の認定書は今年2月に届いた。「今も勉強することばかり。少しでも上手になって展覧会に出品したい」。新人伝統工芸士の挑戦は始まったばかりだ。

 きたじま・よりこ 1975年有田町生まれ。94年有田工業高窯業科卒。別の窯元を経て2008年香蘭社入社。13年一級技能士、17年伝統工芸士(下絵付け認定)。勤務先=香蘭社、電話0955(42)2110。

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