<一球の明暗は/勝者に赤いリボンを/敗者に青いリボンを与えることになった/おそらく/魂が炎となり/蒸気となり/次なる集中が行われる前の/ちょっとした空隙(くうげき)の一球が/劇的であり/残酷でありする…>◆甲子園球場で繰り広げられる夏の高校野球。作詞家の阿久悠さんは、1979年から2006年まで全試合を観戦し続けた。この詩はスポーツニッポン新聞に「甲子園の詩(うた)」と題して連載したものの一つである。1994年の決勝で、樟南(鹿児島)を破った佐賀商の試合を題材にして、熱いドラマの一瞬を切り取っている◆甲子園の高校野球を深く愛した阿久さん。原点は1953(昭和28)年、兵庫県淡路島の洲本高校2年の春、同校が選抜大会で甲子園初出場ながら全国制覇をしたことだった◆離島の学校にして初めての快挙は、島の子どもたちに「やればできる」と、自信を植え付けた出来事となる。無心に一球を追う球児たちに、彼は強さと美しさ、そして儚(はかな)さを見たのである◆きょう全国高校野球選手権大会が開幕する。佐賀代表の栄冠をつかんだのは開校して創部8年の早稲田佐賀。甲子園の伝統校でも初めの一歩は必ずあり、そこから歴史が始まる。臆することなく果敢に、である。阿久さんの詩のように、青春の光の中で、君の無二の一球がきっと輝くだろう。(章)

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