アフリカのナイジェリアのある村では、電気が引かれて電灯がつくことを人々は待ちこがれていた。それまで、村の人たちは夜になると焚(た)き火のまわりに集まって、古老の物語や部族に伝わる話を遅くまで聞いていた◆ところが電灯がついた時から、人々は各戸の裸電球の下に家族みんなで黙りこんで座ったまま、夜が更けるのを待つようになり、神話や伝説は失われてしまったそうだ。実業家で資生堂名誉会長の福原義春さん(86)は、これを「恐ろしい話」として自著『部下がついてくる人』で紹介している◆部族でも企業でも組織は、伝統を語り伝えるリーダーを必要とするという示唆である。指導者こそ、伝統を重んじつつ、「むしろ未来について語るべき」とも福原さんは強調する◆こちらのリーダーは「不安から安心をつないでいく社会にする」との未来を語った。民進党の新代表に決まった前原誠司氏である。党は支持率が低迷し、まさに崖っぷちにきている。離党した議員らが新党の発足を目指す動きもある中で、党の再生を託された◆二大政党制の一翼を担うという旧民主党結党以来の伝統を語り、決める時は決め「党は一つ」の絵を描くのが、新しいトップの仕事である。「新前原丸」は荒波の中での航海となろう。まずは漕(こ)ぎ手たちが心を合わせ、力強く出航することだ。(章)

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