熊本地震の発生から1年になる。14日の「前震」、16日の「本震」と震度7の激しい揺れに襲われ、甚大な被害が出た。佐賀県内も震度5強を観測。経験したことのない揺れの恐怖は、携帯電話から流れた緊急地震速報のけたたましい警戒音とともに、今も生々しく思い出される。

 熊本県のまとめによると、地震による直接的な死者は50人、災害による負傷の悪化や避難生活での身体的負担などによる震災関連死は170人(4月13日現在、速報値)となっている。住宅は、全壊が8667棟、半壊が3万3693棟、一部破損が14万7554棟。仮設住宅などで生活する被災者は、3月末時点で少なくとも4万7725人に上る。解体作業やインフラ復旧が遅れている地域もあり、元の暮らしを取り戻すにはまだ時間がかかる。1年の節目を機に改めて被害の大きさを思い起こし、息の長い支援を続けたい。

 今年2月、震災報道に携わった熊本日日新聞社の毛利聖一・政経部長の講演を聴く機会があった。講演は社会インフラがテーマで、毛利氏は「大規模災害が起きた時、インフラは命に直結する」と指摘。対策本部を置く庁舎や医療機関など拠点となる施設の耐震化の重要性に触れ、対策を進める優先順位の見直しを訴えた。

 熊本地震では、被害が大きかった益城町など6自治体の庁舎が被災。指定避難所も天井や壁の損傷などで安全性が保てず、562カ所のうち71カ所が避難所としての機能を果たせなかったという。物資の集積拠点も使えなかった施設があり、毛利氏はこうした状況が車中泊の避難者を増やす要因の一つになったと報告した。

 熊本県が被災者約3400人に実施したアンケートでは、自宅外に避難した人の47%が最も長く身を寄せた場所として「自動車の中」を挙げ、「市町村が指定した避難所」(17%)を大きく上回った。災害時のよりどころとなるはずの避難所がその役割を十分に果たせなかった状況がうかがえる。

 政府の中央防災会議は11日、熊本地震を踏まえ、防災基本計画を見直した。被災地の要請を待たずに物資を送る「プッシュ型支援」が一部機能しなかった反省から、自治体が輸送拠点を設けて避難所まで送り届ける態勢を整えることなどを柱としている。また、自治体庁舎や避難所の耐震化の推進も挙げている。これらは佐賀県の地域防災計画でも修正した点であり、着実に取り組みを進めたい。

 県内では「佐賀平野北縁断層帯」と「日向峠-小笠木峠断層帯」の二つが国の重点的な調査対象となる「主要活断層帯」に選定されている。大きな地震が起きないとは言い切れない。備えは怠らず、防災・減災対策を強めていきたい。(大隈知彦)

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