カジノを目玉に国際会議場やホテルなどから成る統合型リゾート施設(IR)の導入に向け、政府の有識者会議は設置や運営のルールをまとめた。ギャンブル依存症や治安悪化の懸念が根強いことから、マイナンバーカードを使い日本人の入場を制限したり、入場料を取ったりする「世界最高水準のカジノ規制」を盛り込んだとしている。

 これを踏まえ、政府は来週から東京、大阪など9都市で公聴会を開催し、住民や自治体の担当者、事業者の意見を聞きながらIR実施法案の策定を進め、秋の臨時国会への提出を目指す。一方でパチンコや競馬など公営ギャンブルの依存症対策も取りまとめ、理解を広げていきたい考えだ。

 ただ世界最高水準の規制といっても、入場回数の上限や入場料の額など具体的な中身は、まだ何も決まっていない。普及率が1割にも満たないマイナンバーカードで入場回数などの確認や管理ができるのかという疑問の声もある。中身はともかく、規制のメニューを多く並べ、実施法案成立の環境づくりを急いでいるようにしか見えない。

 そんな中、各地の自治体がIRの誘致に名乗りを上げ、海外のカジノ業者も参入に意欲を示している。政府がいま最優先で取り組むべきは、カジノはもとよりパチンコや競馬なども含めた包括的で実効性のある依存症対策を整備することだ。

 昨年末のIR整備推進法成立を受け有識者会議がまとめた制度概要によると、全国で2、3カ所の選定が有力視されるIR区域一つにつき、カジノ施設は一つに限定。国際会議場やホテル、劇場といった施設との一体運営を義務付け、カジノの収益の一部を国と自治体とで折半して観光振興などに活用するという。

 カジノ事業は免許更新制とし、政府内に新設される「カジノ管理委員会」が暴力団との関係などを調査。マネーロンダリング(資金洗浄)や法令違反といった問題があれば、免許を取り消す。

 最も注目された依存症対策では、日本人入場者にマイナンバーカードの提示を求め、1週間や1カ月単位で入場回数を確認・制限するほか、本人や家族の申告で入場を規制できるようにする。またカジノ内への現金自動預払機(ATM)設置を禁じる。しかし客が持ち込める金額や滞在時間にも上限を設けなければ不十分との指摘もある。

 政府はカジノをあくまでIRの一部とし、IR全体による経済効果を強調する。とはいえ、採算を取るのが難しいといわれる会議場や展示場の運営を“稼ぎ頭”であるカジノの収益で支える仕組みになっており、依存症対策でどこまで踏み込めるか不透明さが残る。

 一方で、警察庁はパチンコの出玉の上限を現行の3分の2程度に抑えるなど射幸性を抑制する風営法施行規則などの改正案をまとめ、パブリックコメントを実施している。パチスロにも同様の規制を掛けるという。カジノ解禁により予想される依存症の深刻化に対処するためだが、それよりもカジノとパチンコ、さらに競馬や競輪なども含めたギャンブル全体に及ぶ規制を検討すべきだ。

 カジノで待ったをかけても、ほかのギャンブルに流れては元も子もない。ただ万全の依存症対策を取れば、カジノの運営は厳しくなるだろう。それでもカジノが必要か、改めて考えてみたい。(共同通信・堤秀司)

このエントリーをはてなブックマークに追加