沖縄には「肝苦(ちむぐ)りさ」という言葉がある。「胸が痛い」という意味で、他人の苦しみを分かち合うニュアンスが込められている。おととい、92歳で亡くなった元沖縄県知事大田昌秀さんの著書で知った◆この「ちむぐりさ」を用いたことわざもあるそうだ。「他人に痛めつけられても寝ることはできるが、他人を痛めつけては寝ることはできない」と。自らよりも他者を思いやる、沖縄の心だろう◆沖縄師範学校の学生だった大田さんは「鉄血勤皇隊」として沖縄戦へ駆り出される。戦後70年を前に出した『沖縄戦の深層』(高文研)は「『軍隊は民間人を守らない』という沖縄戦から学び取った貴重な教訓」を、戦争を知らない世代へ伝えたいとペンを執った◆沖縄戦の14歳未満の死者のうち、最も多い死因は「壕(ごう)提供」の1万人余り。「自分たちで作った避難壕を、守備軍将兵が使用するために追い出されて死んだケースが圧倒的に多い」「非戦闘員は、決して保護の対象とはなり得ない」と訴える◆自らの体験を元に、政治家としての歩みは「反戦平和」で貫かれていた。敵味方、国籍を問わず、すべての戦没者の名を刻んだ「平和の礎(いしじ)」建立が、その象徴だろう。大田さんの言葉に目を通していると、沖縄の現状は沖縄戦の延長線上にあるのだと突きつけられているようで、胸が痛む。(史)

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