世に相撲ファンは多い。作家の舟橋聖一(1904~76年)は文壇きっての相撲通だった。東京・本所に生まれ、生家の筋向かいに当時全盛の「友綱部屋」があった。力士が出入りし、関取と並んでちゃんこ鍋をつつくという幼少年期を過ごしている◆戦後、横綱審議会委員になり、名著『相撲記』を残した。その中で戦前の名横綱、玉錦の猛稽古に触れている。まだ幕下だった頃、先輩の栃木山や常の花が場所入りするのを待ちかねて、「一番願います」と言って稽古を乞い、先輩たちがいくら負かしても「もう一丁頼みます」と、何番でもかかってきた◆しまいには根負けして、わざと負けてやると、にこにこ喜んで引き下がったという。力士としては小兵の玉錦は大成し、続く後輩にもそうやって稽古をつけてやり、伝統をつないできたはずだ。体力だけでなく頭脳や精神力に加え、胆力や闘志が総合されての「相撲力」なのである◆そんな妙味のある力業が見られることだろう。松浦地区青年相撲がきょう、唐津市体育の森公園相撲場で開かれる。70回を迎える節目の大会である。青年団相撲を土台に発展し、多くの名選手を生んできた◆激しいぶつかり、繰り出される大技、崩れ落ちる巨体…。迫真の勝負がまた相撲ファンを生む。選手の背にある郷土の誇りが、より大会を熱くする。(章)

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