7月27日、トルコの首都アンカラで、国旗を掲げ気勢を上げる人たち(ロイター=共同)

■言論統制、「魔女狩り」状態

 7月半ばのクーデター未遂後、トルコ当局が言論統制を強めている。反乱鎮圧を機に、反政府系メディアへの弾圧の動きが加速した格好だ。愛国世論が高揚、政権批判をしづらい雰囲気も生まれ、メディア側の自主規制も。反クーデター報道に徹し、結果的にエルドアン大統領を助けたとも言われるメディアは一転、恐怖に身構えている。

 「(反乱時に)安全が確保されていない中、市民に街頭に出るように呼び掛けるべきではなかった」。7月25日、トルコ民放テレビの討論番組。大学教授がエルドアン氏を批判すると、他の出演者が「市民はそんな発言を期待していない」とかみつき、教授はCM中にスタジオから追い出された。同局は「発言が一線を越えた」と説明した。

■130社閉鎖、記者42人拘束令

 トルコ国内ではエルドアン氏支持者らが連日、国旗を掲げ街頭で集会を行う。過熱気味の世論を背景に、当局は黒幕と断定した在米のイスラム指導者ギュレン師と関連があるとみなす軍、司法、教育関係者らを大量粛清。かつてトルコ最大規模の60万部を誇ったザマン紙を含む新聞やテレビなど約130も閉鎖した。

 また、記者42人に拘束令状を出し一部を逮捕。言論統制の対象となった中には、ギュレン系とは言い難いメディアや記者も含まれ、人権団体は「魔女狩り」と非難。「取材に応じられる雰囲気ではない」などと、政権に批判的な多くの記者や識者が取材を拒む。

■政権転覆を阻止

 主要メディアが反クーデターを堅持したのは、民主主義擁護の立場からだ。「政治的問題は多いが、武力では解決できない」と民放テレビCNNトルコの報道局長フェルハト・ボラタブ氏は反乱鎮圧直後に語った。

 同局は反乱勢力に国営テレビなどが占拠される中、大統領側近に電話、地方で休暇中だったエルドアン氏の発言を、スマートフォンを通じ映像付きで中継し、市民が街頭に出て反乱に対抗するきっかけをつくった。政権転覆阻止に一役買った格好だが、反乱鎮圧後、言論統制は勢いを増している。

 エルドアン氏が実権を握る政権は以前から、批判的な報道を抑圧してきた。トルコ情報機関によるシリア反体制派への武器供給疑惑をスクープした記者ジャン・ドゥンダル氏は、政府の秘匿すべき情報を暴露した罪で5月、一審で禁錮刑を宣告された。

■新たな段階

 今回閉鎖されたギュレン師系のザマン紙は3月から「テロ組織との関わり」を理由に政府管理下に置かれていた。

 CNNトルコを運営するドアングループは2009年、脱税の追徴金などで25億ドル(約2550億円)の支払いを命じられた。背景には、政権批判の報道があったとされ、専門家は「政府は全ての批判的メディアを統制しようとしてきた」と指摘する。だが、今回の言論統制の急激な拡大ぶりについてドゥンダル氏は「弾圧は新たな段階に入った」と訴えた。(イスタンブール共同=平野雄吾)

 =ズーム= 報道の自由とトルコ 

クーデター未遂前に「国境なき記者団」が発表した2016年の報道の自由度ランキングでは、180カ国・地域で151位。米人権団体「フリーダムハウス」の3段階分類では、13年以降毎年、最も低い「不自由」。同団体のまとめでは、15年末時点で31人の記者が獄中に。「テロをあおった」などの曖昧な理由や、大統領を侮辱した罪で罰金や禁錮刑も。15年11月には、エルドアン大統領に批判的な新聞社が支持者らによる襲撃に遭った。

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