レオナルド・ダビンチはイタリアのルネサンス期の画家であり、建築家、彫刻家だが、さまざまな分野に傑出した業績を残し、「万能人」と呼ばれている◆彼は1482年、ミラノ公ルドヴィーゴに、自らを「戦争技術の達人」として売り込む手紙を送っている。大口径の大砲で重い石を飛ばせる射石砲、連射式の火縄銃などの兵器を考えていた(池内了著『科学者と戦争』)。もともと科学技術は両刃の剣であり、時に国を動かし、人の命さえ奪う◆現代の研究者の置かれた環境が揺れている。防衛省が大学や企業の技術研究に資金援助をする制度を2年前につくり、当初3億円だった規模が新年度、110億円まで膨らむ予定という。米軍からの研究費も、この10年間だけで少なくとも8億円超に上ることが分かった◆戦後「軍事目的の研究はしない」と宣言してきた日本学術会議は賛否割れている。防衛目的ならいいとの意見もあるが、軍事との線引きは難しい。過去に核兵器開発を後悔した先人がいた。教訓を生かすことが大切で、背景になっている、民生利用の基礎研究への予算の削減に歯止めをかける必要があろう◆ダビンチは「十分に終わりのことを考えよ。まず最初に終わりを考慮せよ」という言葉を残している。軍事目的の研究が何をもたらすかは、始める前の深慮がいる。(章)

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