自らがデザインした置物に絵付けする手塚節子さん。「伝統工芸士となったことがデザインの仕事にも役立っている」と話す=有田町幸平の深川製磁

深川製磁でデザインを担当する手塚節子さん。年間10種類ほどの新商品を開発している

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 「入社するまで焼き物を扱ったのは高校の時に有田陶器市でバイトしたくらい。それが一生の仕事になるなんて」とはにかみながら笑う。

 高校卒業後に入社した深川製磁でデザイン室一筋に勤務を続ける。仕事内容は幅広い。年間10種類ほど生み出す新商品開発とともに、特別注文や海外の見本市用の企画など、常に幾つかの作業が同時並行で進む。サンプル作りでは、下絵付けとともに上絵付けも自ら手掛ける。

 下絵付けの伝統工芸士の試験を受けようと思ったのは2010年。上司の勧めもあり、「会社で20年以上磨いた技術の証し」を得ようとした。入社してすぐに「だみ」と呼ばれる手法は学んだが、線書きなどの染付作業を行うことは少なかった。3回目の挑戦でようやく認定を受けた。

 「ふだんの作業だけでは分からなかった『自分に足りないもの』を見つめ直すきっかけになった。仕事する上でプラスになっている」と振り返る。

 伝統工芸士の試験に向けた勉強をする上で、頼りになったのが先輩職人たち。行き詰まって教えを請うと「一つ尋ねたら十教えてくれる」環境で実践的な技術を身につけていった。

 伝統工芸士になって改めて職人の「もの作りへの真摯(しんし)な思い」を感じている。絵付けだけでなく、型作りや釉薬、絵の具の調合など、さまざまな分野のスペシャリストがいて、形や色合いがデザイン通りに仕上がるよう何度も試行錯誤を続けてくれる。「ちょっとした違いでも『もう一回やってみるけん』と言ってくれる。ありがたいです」と感謝する。

 だからこそ「多くの人の手が関わる焼き物を、デザインでだめにしてはいけない」とこれまで以上に気を引き締め、職人の思いを乗せたデザインに取り組む。「伝統工芸士としてはまだまだ勉強が必要。先輩たちの技を少しずつでも学びたい」と前を向く。

 結婚前はグループ展などに出品していたが、子育てと仕事の両立のため、しばらく離れていた。「子どもも手が掛からなくなってきた。そろそろ自分の作品にも取り組みたい」

 てつか・せつこ 号は「桜心(おうしん)」。1969年武雄市生まれ。有田工業高デザイン科卒業後、87年深川製磁入社。2014年伊万里・有田焼伝統工芸士(下絵付け)。勤務先は有田町幸平の深川製磁、電話0955(43)2152。

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