花一つ一つを立体的に描き出したアジサイ文様のつぼを手にする相良満州男さん。細密画のような筆致や若々しい感性を保つためにも現役の陸上選手を続けている

■衰えぬ意欲と技術

 一枚一枚が浮かび上がるように描いた花びらからは生命の躍動が伝わる。一筆に魂を込め、同じものは二つとない細密画を思わせる作風は、今も現役アスリートとして鍛え抜かれた肉体と精神力が支える。ボタンやツバキの燃えるような深紅、黄梅の淡い黄色と自由自在な色づかいで鍋島の伝統を守り続ける。

 中学生で父・柴田又義に師事してこの道60余年。以来、緻密な写実性とスケールの大きい豪快さが同居する狩野派の絵を理想に掲げてきた。一方で染付のみで竹林や山水画の風景も好んで描く。一切の妥協を許さない姿勢は先代の気風を受け継いだ。「小手先の技術論ではなく、基礎になるデッサン力がなくては伝統技術を守ることはできない」という。

 新たな境地を切り開こうと模索を続けてもきた。黄梅は佐賀国体で来県した天皇陛下への献上品を作る中で品格のある色合いを出すことに腐心した思い入れの強い文様。アジサイ文様で紫や青に加え、大胆な赤を用いて強い生命力を感じさせる作品もあり、あたかも「動」と「静」の対照をなしている。

 作品づくりを支えているのは、趣味のゴルフと陸上短距離競技の選手として鍛錬で造りあげた身体。75歳で全日本マスターズ陸上選手権大会300メートルハードルで優勝、国際大会も制した本格派だ。「じっとしていると思いっきり動きたくなるもので、いい作品を作るためにやっているようなもの」と相良さん。作陶とトレーニングは1日おきに繰り返す。手が震えることなく筆は進み、足腰の強さも作品の安定感につながる。ジョギングをしながら出合う花鳥風月は、作品に取り込んでいる。

 還暦以来、節目の年齢で個展を開いており、来年の80歳の傘寿に向けて新作に取り組む。大皿や花瓶だけでなく、ティーセットやフリーカップなどの日用食器にも手を広げる。「最低でも米寿の作品展までは続けたい」。齢80歳を前にして「いまだ道半ば」と語る姿に、衰えぬ創作意欲と技術への自負がにじむ。

 さがら・ますお 1938年、西松浦郡有田町生まれ。雅号は岳山。父・柴田又義に師事。80年に伝統工芸士(下絵付け)。全国マスターズ陸上で数多くの優勝経験を誇る。有田町上本乙2945の4

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