手話を交えてあいさつする今村彩子監督=佐賀市のシアターシエマ

トークショーのあと佐賀市の自転車店「ツカササイクル」を訪れた今村彩子監督(中央左)と、同店の小辨野司さん(中央右)、小辨野利英子さん(左)、宮城県人会さが代表の富田万里さん

■思いを伝える大切さ講演

 沖縄県から北海道まで自転車で旅をするドキュメンタリー映画「Start Line(スタートライン)」の今村彩子監督(37)が12日、佐賀市のシアターシエマでトークショーを開いた。映画は生まれつき耳が聞こえない今村監督自身の記録で、健聴者と話す苦手意識を克服するため旅で出会った人と会話しようと奮闘する。今村監督は「耳が聞こえても聞こえなくても、自分から思いを伝えることが大事」と、詰めかけた約100人に訴えた。

■会話の壁「耳のせいではない」

 2015年の夏に1日平均70キロを走り、57日かけて日本を縦断。坂が多く台風に襲われた九州が過酷だったと苦笑した。道を間違えても教えない、道中で通訳をしないなどを約束し、愛知県名古屋市の自転車店で働く健聴者の堀田哲生さんが撮影で伴走した。

 今村監督は健聴者と同じ小学校に通ったが、話の内容が分からなくても友達が笑っていたらとりあえず笑い、会話についていけない寂しさを募らせていた。大人になっても健聴者とうまく会話できないのを耳のせいと半ば諦めていたが、「コミュニケーションが取れないのは耳が聞こえないからではなく、話すのが下手だから」と2年前に堀田さんに指摘された。海外で生活し、言葉が分からない苦悩を知る堀田さんの言葉が響き、今村監督はコミュニケーションをテーマに旅をして、映画を撮ろうと決意した。

 映画を見た生まれつき耳が聞こえない竹下愛萌(まなめ)さん(12)は「(今村監督が)積極的にコミュニケーションを取ろうとしていて勉強になりました」と感想を紙に書いた。

 旅に出てもなかなか自分を変えられず葛藤した今村監督。「旅の最後に自分が健聴者に話しかけ、やっと一歩踏み出せた。これは私がスタートラインに立つまでの映画です」と胸を張った。同映画はシアターシエマで17日まで、10時と15時50分から上映する。

このエントリーをはてなブックマークに追加