第3次安倍再改造内閣がスタートした。ほぼ半数の閣僚が入れ替わったとはいえ、アベノミクスや外交を支える主要閣僚は留任している。政権を安定させ、自民党総裁の任期延長や憲法改正に向けて流れをつくろうとする首相の深謀遠慮がうかがえる。

 安倍晋三首相は会見で「新内閣は未来へのチャレンジ内閣。参院選で得た安定した政治基盤の責任の重さをかみしめ、選挙公約を丁寧にスピード感をもって実現したい」と自信をにじませた。

 内閣の要といえる麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、岸田文雄外相の3人は2012年12月の政権復帰以来、起用が続いている。首相と近い高市早苗総務相、塩崎恭久厚労相、石原伸晃経済再生相も留任となった。政権の中枢ポストはほとんど手をつけず、閣僚交代による混乱のリスクを回避した人事といえる。

 石破茂前地方創生担当相が次の総裁選出馬を視野に入閣を固辞したが、石破氏のグループを含め、すべての派閥から入閣している。安倍首相は2年後に党総裁の任期が切れるが、任期延長への同意を得るため、全方位的な配慮を見せているといえよう。

 佐賀県に関わるのは組閣の目玉として防衛相に就任した稲田朋美前政調会長だ。自衛隊新型輸送機オスプレイの佐賀空港配備問題が2年ほど膠着(こうちゃく)状態が続いている。稲田氏は首相と考えが近く、憲法9条改正に熱心な議員の一人であり、軍事施設の配備に反発する地元にどのような姿勢で交渉に臨むのか注目される。

 安倍首相は稲田氏を後継者の一人と位置づけ、「初の女性首相」に育てたいと考えているといわれている。防衛相も場数を踏ませるためのポストとなるのだろう。

 しかし、佐賀のオスプレイ問題や沖縄の基地問題は政治家の手柄のための舞台ではない。軍事施設の問題と日々向き合う地域住民のことを考え、誠実な対話に努めてほしい。

 県関係では今村雅弘衆院議員が復興相として初入閣した。福島第1原発周辺では今も故郷に帰れない人が多い。先の参院選では被災した東北3県すべてで自民党候補が敗れるなど住民の不満の強さが浮き彫りとなっている。今村氏には地元の思いに寄り添った復興対策が求められている。

 内閣が安定志向なら、顔ぶれを一新した党役員人事には安倍首相が次を見据えた狙いも透けて見える。注目すべきは事故で負傷した谷垣禎一氏に代わり、幹事長に就いた二階俊博前総務会長だろう。誰よりも早く首相の総裁任期延長を容認する発言をしている。

 二階氏は国会対策の経験が豊富で野党とのパイプが太い。秋にも始まる憲法審査会に向け、安倍首相はその「政治的技術」を買っての起用ともいわれている。

 二階氏自身は中国や韓国との関係を重視し、憲法改正には慎重な立場という。3日の就任会見で「慎重の上に慎重に対応する。野党とできるだけ話し合う姿勢が大事だ」と述べた。憲法改正論議でキーマンの一人となるだろう。

 戦後初めて衆参ともに改憲勢力が国会の3分の2を占める状況が誕生した。安倍改造内閣は選挙によって得た強大な力をどう使うのか。国民がしっかり見ていることを忘れてはならない。(日高勉)

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