ドライバー不足が深刻化している運送業界。長時間労働の解消など処遇改善も課題になっている=神埼市内

■休日、賃金に差 要員補えず悪循環

 佐賀新聞社が実施した人手不足に関するアンケートでは、人材確保がままならず、社員の負担増に苦慮する県内企業の姿が浮き彫りになった。大都市圏や大手企業との人材争奪戦が激化し、今春の採用ができなかったという企業も。要員不足を補う派遣社員も賃金上昇などで活用は難しく、顧客サービスの見直しや廃止を迫られるケースも出ている。

 佐賀大学(佐賀市)にずらりと並んだ大手企業の求人票。「これでは県内の企業がかすんでしまう。学校側がいくら地元就職を勧めても、空前の売り手市場で大企業にこだわる保護者も多い」。田口電気工業(三養基郡基山町)の田口英信社長はため息をつく。

■応募半減

 優秀な学生を採用するため同大学や隣県の大学にも通い詰めてきた。それでも就職サイトでのエントリー数は今年、最盛期の1500人から半減し、「大手が採用枠を広げて囲い込んでいる。2、3次募集ですら学生を拾えなくなった」。

 佐賀市の印刷会社は「学生の関心事はどれだけ休みが取れるか。うちは完全週休2日制でなく、そっぽを向かれた」。大手の充実した休業制度と比較され、今春は15人の計画に対し、採用できたのは1人にとどまった。

 人手が足りず、サービスの抑制に追い込まれるケースもある。嬉野市の旅館は一昨年から、部屋での食事を一部、レストランに切り替えた。客室係が3年前から十分に確保できていないためで「勤務時間が長く、結婚を機に退職する女性が後を絶たない」という。

■1.6倍

 繁忙期に派遣社員の受け入れでしのいできた武雄市のホテルは「時給は1500円。パートの1・6倍にもなる」。人件費の上昇に頭を抱え、売り上げ減も覚悟の上で宴会場の利用制限を検討し始めた。

 県西部の人材派遣会社によると、これまで製造業中心だった派遣先が飲食、倉庫などサービス業にも拡大。需要の高まりから給料や仲介手数料は上昇傾向で、「勤務時間を短くしたり、休みを増やしたりして、子育て世代に配慮した求人も増えている」という。

 佐賀県の6月の有効求人倍率は3カ月連続で1・2倍を超える高水準が続く。新規求職者数は5カ月連続で減少。運輸や建設、流通業界では人手不足が慢性化している。

■上昇限界

 毎年5人程度の高校生を定期採用してきた唐津市の運輸業は今春、1人も採用できなかったといい、「残業に音を上げて数カ月でやめてしまう若手もいる」。長時間労働で人材確保がさらに困難になる悪循環に陥っている。「有資格者が欲しいが、こだわってはいられない」と、工業系高校だけでなく普通校にも採用枠を広げる建設会社も多い。

 対応策として、アンケートでは「来春の新規学卒者を採用」との回答が7割に上った。ただ、「小さなパイの奪い合い」(建設業)との声は根強く、テナントの販売員が数百人規模で不足している大型店もある。

 信用調査会社の帝国データバンクは「人手不足で売り上げが思うように伸びない企業は多い。業績改善を前提としない人件費の上昇は限界に近づいている」と警鐘を鳴らす。

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