道路を通り、トンネルを抜け、橋を渡る-。日常生活はこうした社会インフラを使うことで、それぞれの目的地への移動が可能になっている。それが当たり前と思っているが、維持・管理や補修を怠れば、いずれは使えなくなり、暮らしに大きな影響が出てくる。

 橋などのインフラは、建設から50年が更新の目安とされる。佐賀県内の道路橋(昨年3月末時点)をみてみると、県と市町が管理する長さ2メートル以上の橋は1万1673で、架設年次が不明な分を除くと6894。このうち21・8%の1501は、供用開始から50年が経過している。

 道路橋の多くは高度経済成長期以降に整備されており、今後は加速度的に老朽化が進む。50年を経過した橋の割合は10年後に49・1%、20年後には71・9%と推計されており、更新時期を迎える橋は着実に増えていく。

 50年を経過したからといって、すぐに崩落するわけではないだろうが、何の対策もせずにいつまでも使い続けることはできない。しかし、国や自治体の財政状況が厳しい中で順次、新しい施設に造り替えるのは難しい。定期的な保守点検に加え、必要な補修を施しながら、可能な限り長く使えるようにする「長寿命化」の取り組みが重要になる。

 ただ、補修をするにも一時期に集中すれば、対応が難しい。人口減少、低成長経済の中で大幅な税収増は見込めず、社会福祉関連の費用も膨らんでいく。おのずとインフラに充てられる予算は限られ、その中で必要な新規の整備にも取り組まなければならない。既存施設の補修は計画的に進め、財政負担を平準化しながら供用期間を延ばしていく必要がある。

 県は、既に道路橋を対象とした「長寿命化修繕計画」を策定している。点検によって橋の健全度を評価し、補修や架け替えの計画を立てて取り組んでいく。現状を把握して適切な対策を講じ、県民の安全・安心を確保していきたい。そのための技術力向上も課題の一つで、大学などの研究機関や建設業界との連携強化も求められる。

 老朽化対策は新たなインフラ整備と違い、県民生活が飛躍的に高まるわけではないが、放置すれば多大な影響が出てくる。工事をするとなれば、通行規制や交通渋滞も想定される。進めていくには県民の理解と協力が欠かせず、老朽化対策の必要性や重要性を広く伝えていかなければならない。

 東日本大震災や熊本地震のような甚大な災害が起きると、新しい施設でも損傷する場合があるし、補修をしたからといって完全に防げるわけではないが、老朽化で強度が低下したままでは被害が大きくなる。早め、早めに対策を進め、10年後、20年後の不安を解消していきたい。(大隈知彦)

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