熊本地震後、外国人向けに情報を翻訳した災害多言語支援センター=熊本市国際交流会館(熊本市国際交流振興事業団提供)

 熊本地震では外国人も避難所に身を寄せたが、言葉が通じずにストレスを感じて退去するケースがあった。日本に在留する外国人は増加傾向にあり、2016年末時点で過去最多の238万人。災害時に情報をどう伝達して支えるか、大きな課題になっている。

 昨年4月16日、熊本地震本震後の早朝の出来事だった。インドネシア出身で、佐賀大学で非常勤講師を務めるスリ・ブディ・レスタリさん(38)の携帯電話の会員制交流サイトにメッセージが届いた。「これはどういう意味ですか?」

 送り主は、佐賀市に住むインドネシアの留学生。佐賀でも最大震度5強の揺れが観測されていたが、緊急地震速報のメールを理解できず、戸惑いながら文面の画像を送信してきた。

 留学生の隣に住むパキスタン人の一家からも相談を受けた。身重の女性もいたが、日本語はほとんど話せない。「避難したいけれど、どうすればいい?」

■避難所離れる

 地震後の混乱の中、熊本の留学生らは大学の体育館に避難したり、地域の避難所に身を寄せたりした。

 混乱したのは定住者だけではない。海外からの旅行客はホテルの宿泊を延長することが厳しくなり、行き場に困った。本震が発生した16日から、24時間対応の避難施設として開放された熊本市国際交流会館には旅行客が詰めかけた。

 九州の国際交流組織の職員らは本震から数日後、被災地に入っている。熊本市内の避難所にいた外国人に状況を聞き取る一方で、災害や支援に関する情報を英語や中国語、韓国語に翻訳する「災害多言語支援センター」の運用を市国際交流会館で始め、チラシやウェブサイトで発信した。

 支援に加わった佐賀県国際交流協会の矢冨明徳さん(41)=福岡県柳川市=は、避難所で出会ったスリランカの女性の一言が忘れられない。「誰も話し掛けてくれない」

 こうして情報を渇望しながらも、避難所に身を寄せず、カップラーメンに注ぐお湯だけをもらいにくる東アジア系の若い女性。大きな余震が収まらないうちに、損壊したアパートに戻っていった留学生グループ…。行動は分かれた。

 熊本市国際交流振興事業団の勝谷知美事務局次長(48)は振り返る。「言葉が通じない状態や生活習慣の違いへのストレスで、地域の避難所を離れる選択をした人もいる。外国人同士のコミュニティーで助け合うこともできるかもしれないが、『いま何が起きているか』という情報を正確に得ることができなければ、『津波が襲ってくる』といった誤った言説に振り回されることにもなる」

■訓練に参加を

 佐賀県内の在留外国人は昨年末で5140人。技能実習生や日本人学校への留学生が増え、14年の4285人から急増している。

 県と県国際交流協会は、災害時に多言語支援センターを設置する協定を結んだ。協会は、災害時の対処法を盛り込んだ生活ガイドを8カ国語に分けて作った。

 矢冨さんは、こうした手だてに加え、少なくとも定住者には、地域の避難訓練に参加してもらうべきだと考えている。「日頃から顔を合わせ、互いに理解を深めておけば、孤立する状態は防げる」

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