東洋文化研究者アレックス・カー氏(64)

 数年前まで景観の話をすると、経済発展を邪魔するものとのイメージが強かった。確かに古い町を壊して、便利な道路を造るほうが成功している町だったかもしれない。

 しかし観光に依存していく時代は逆だ。地方都市は企業誘致もままならず、農漁業の大きな飛躍も期待できない中、観光で滞在人口を増やすのが最後の救い手になる。そこで地方に未来性があるか、ないかの決め手は景観。これをお粗末にしてきた町は厳しい。

 町並みや景観には「何でもない魅力」というのがある。徳島県の山奥の祖谷(いや)にある築300年の古民家を買った。文化財とかそんなラベルがついたものではないが、ここに約20年で数十カ国から約3万人が訪れた。

 祖谷では、いま8軒を手直しした古民家ステイが人気だ。客の3割が関東からで驚く。その交通費であれば海外まで行ける。外国人だけでなく、何でもない美しい景色に日本人も飢えている。

 景観に配慮しない公共事業が、美しい風景にダメージを与えてきた。最初から手のひらにあった古い町、山や川をどう再認識して、生かすかがこれからの課題だ。

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