島外避難訓練で船に乗り込む加唐島の島民=唐津市鎮西町

 船窓からは遠くに九州電力玄海原発が見えた。4日の原子力総合防災訓練で唐津市の加唐島では、ヘリと船を使った島外避難を行った。玄海3号機の再稼働が来年1月に迫る中、高齢者が多くを占める島民は事故への不安を募らせつつ、粛々と手順をたどった。

 曇り空だったが、風も波も穏やかだった。訓練前、海を見ていた松下仁雄さん(80)は「きょうはいいけど冬は特に海が荒れる。島は逃げたい時に逃げられず不安はある」。高齢で足腰が弱り、坂道が多い島内を歩くのは一苦労。バイクで移動するが「雨でも降って歩いて避難所に行くとなれば無理」とこぼした。

 玄海原発から放射性物質が放出され、半径5~30キロ圏の一部住民に避難が指示された想定。原発までは直線で約10キロしかない。午後12時25分、防災行政無線で避難要請があり、島民約40人が加唐小中学校の体育館に集まった。被ばくを軽減するための長袖、手袋、マスク姿の島民も多かった。

 診療所の医師らが安定ヨウ素剤に見立てたあめ玉を配り、避難準備を整える途中、座っていた70代男性が横になった。もともと呼吸器の持病があり、マスクで呼吸がしづらくなった。その場にいた医師らの判断で訓練参加は見送った。

 体育館でヘリと船に班分けをした後、島民は発着所に歩いて移動。まだ乗船準備ができておらず、船着き場でしばらく待っていた。訓練をチェックしていた市民団体の男性は「本当なら放射性物質が飛んでいるかもしれない。もっと適切な誘導が必要だ」

 海路では4隻に約25人が分乗、安全を優先して、ゆっくりと約1時間かけて唐津東港へ。乗っていた宗孝子さん(68)は「訓練だからかもしれないけど、もっと速い船を用意してほしい。これが事故なら気が気じゃない」と注文した。

 一方、玄海原発から14・5キロ離れた唐津市の高島。天候悪化で島外に出ることができない想定で、放射線防護対策施設に一時退避する訓練があった。住民約60人が、徒歩や自転車で2カ所ある施設へ集まった。

 自力で避難できない高齢者は消防団員が車で輸送。今年1月に完成した1カ所の施設が初めて運用されたが、袋小路になった立地で車のアクセスが不便という課題も見えた。野崎海治区長(69)は「再稼働も控え、より確実な避難につながるよう住民の意見を反映してほしい」と訴える。

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