ドライバー不足が深刻な運送業界。取引企業と運賃引き上げ交渉を始める企業も出てきた=神埼郡吉野ヶ里町のミヤハラ物流

 宅配便最大手のヤマト運輸をはじめ、大手運送会社で運賃値上げの動きが広がる中、佐賀県内でも値上げを検討する企業が出てきている。ドライバー不足による労働時間の長期化が多くの企業で課題になっており、値上げによる増収を賃金に反映し、働き手の確保につなげたい考えだ。

九州一円で食料品などを配送するミヤハラ物流(神埼郡吉野ヶ里町)。ヤマト運輸の運賃値上げ決定を受け、荷主に対して運賃を現状から3~5%引き上げる交渉を始めている。

 「業界最大手の英断はアナウンス効果が大きく、交渉を投げ掛ける糸口になる」と宮原章彦社長。運賃値上げでドライバーの賃金を引き上げ、他業種に流失している若い世代のつなぎ止めを狙う。

 県内で事業を展開している運送業者は約500社。車両は約1万台あり、地場企業が県内の物流の90%以上を担っている。ただ、ドライバーの高齢化が顕著で10~30代は全体の約30%にとどまる。宮原社長は過重労働で低賃金が続く限り、世代交代は進まないと指摘し、「人手が増えれば仕事を分散し、労働環境を改善できる。業界の“負のイメージ”を払しょくしたい」と力を込める。

 2020年の東京オリンピック開催に伴う需要の高まりを受けて、業界からはトラック不足が懸念される建設業界などが値上げに理解を示すのではといった期待の声も漏れるが、大都市圏に比べて荷物の少ない地方や中小企業では、値上げは限定的との意見もある。

 県トラック協会の馬渡雅敏会長(松浦通運社長)は「九州は仕事の量が限られる。トラックが足らないという状況にならない限り、荷主が(値上げの)協議に応じるとは考えにくい」と指摘する。

 消費税再増税を2年後に控えるなど景気の先行き不安も影を落とす。「運賃値上げが実現したとしても、果たしてどこまで給料に反映できるだろうか」。ある経営者は複雑な表情を浮かべ、「安易な賃上げは将来的に会社の首を絞める恐れもある」とジレンマを語る。

 運送料金を巡っては、ヤマト運輸がドライバー不足や再配達の増加で集配コストが増えているとして、10月1日から宅配便の基本運賃を平均15%引き上げる。日本通運は7月から、小口貨物を運ぶ「アロー便」の標準的な運賃を1割引き上げ、日本郵便も「ゆうパック」を来年3月から平均12%上げる方針を示している。

【写真】ドライバー不足が深刻な運送業界。取引企業と運賃引き上げ交渉を始める企業も出てきた=神埼郡吉野ヶ里町のミヤハラ物流

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