佐賀県の副島良彦副知事(右から2人目)に基金案の受け入れを求める農水省の室本隆司農村振興局次長(左から2人目)=佐賀県庁

 国営諫早湾干拓事業を巡る開門差し止め訴訟の和解協議に関連し農水省は4日、佐賀、熊本の両県を訪れ、開門に代わる漁業環境の改善策として示している基金案の受け入れを求めた。開門調査を求めてきた両県とも「訴訟当事者ではなくコメントする立場にない」とする基本的な考え方を示した。長崎地裁が確認を求めた4県と各漁協・漁連のうち、明確な賛意を示したのは長崎県だけで、基金案は手詰まり状態となっている。

 「長い歴史にわたる大きな課題としての諫早湾問題で、それぞれの思いは簡単には払拭(ふっしょく)できない。絡まった糸を解きほぐすような作業が必要だと実感している」。基金案受け入れを求める最後の場所となった佐賀県を訪れた後、室本隆司・農水省農村振興局次長は厳しい表情を浮かべた。

 佐賀県の副島良彦副知事は、有明海の環境変化について原因究明とその対策を求めており「開門は原因究明の一つの手段」と位置付け、「最終的な思いは有明海再生にある」と強調した。ただ基金案に関しては「あくまで和解協議の話だと理解している」とし、当事者ではない司法手続きとは一線を画す。

 長崎地裁で続く和解協議で国は5月、開門の代替案として「有明海振興基金」の創設を提案した。ただ、基金で実施する事業に目新しさはなく、漁業者側は「実効性はない」などと反発している。裁判長は7月27日、基金の運営主体となる4県と各漁協・漁連に受け入れが可能かどうかを聞き取り、9月6日までに報告するよう国に求めた。

 4日までに8者すべてで聞き取りを終えたが、明確な賛意を示したのは長崎県だけで、長崎県漁連も立場を明確にしなかった。佐賀、福岡、熊本の3県は漁業者に寄り添う姿勢を示し、3県の漁協・漁連は開門を求める姿勢を崩していない。

 室本局次長は「裁判所は、和解協議が進むのかどうかを見極めたいと思っている」と推察し、関係者に理解を求める。基金案に加える新たな策や、これまで提示していない基金の規模にも言及する可能性を示唆し「事務レベル協議も増やし努力する」として、期限まで説得を続けるという。

 漁業者側の弁護団の一人は「次回か遅くとも次々回で、裁判所が和解協議を打ち切るか続けるかの判断をする可能性がある」と指摘する。国、漁業者、営農者の三者がそろい1月から続く和解協議は、大きなヤマ場を迎えている。

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