文部科学省は今後10年ほどの教育指針となる学習指導要領の改定内容を公表した。小学生は2020年度から、中学生は翌21年度から全面実施となるが、英語教育の早期化やパソコンを活用したプログラミング教育など新たな試みも多い。掲げる理想の高さの一方で学習内容が増え、詰め込み過ぎることへの懸念も出ている。

 新指導要領は子どもたちをどう育てたいのか、その考え方が見えるものとなった。中央教育審議会が目玉の一つとして検討を続けた「アクティブ・ラーニング」は「主体的・対話的で深い学び」と言葉が置き換えられている。しかし、教師が一方的に話す一斉授業を改善し、討論や発言の機会を増やし、自ら考える力を育てる授業改革の方向性はそのまま残った。

 国際比較での学力向上が狙いであり、世界の教育の流れが知識偏重からの脱却ということもある。調べものならパソコン検索で簡単にできる。大事なのは多くの資料の中から、自分の考えをまとめ、発表する力だ。これまで学習内容を定めていた指導要領が、学習方法まで踏み込んで言及したのは画期的と言えよう。

 英語やプログラミング教育を小学生から始めるのも国際化や情報化時代への対応であり、意欲的な改革と言える。ただ、平日の時間割は現在でも1こま(45分)の余裕もなかったのに、英語が小学3~6年生で週1こまずつ増えたため、時間割の限界を超えてしまった形となった。

 文科省はその解決を学校現場に委ねている。45分の授業を15分ずつ三つに分けて朝の時間に実施するか、土曜日登校や夏休み短縮のいずれかで、決められた授業時間数を確保するように求めている。

 ただ、朝の時間はすでに多くの学校が読書や漢字・計算タイムなどに使っており、学校側に選択の余地は少ない。もともとは、各方面からの授業を増やす提案だけを受け入れ、何も削ることができなかった国の対応に問題があったのではないのか。

 文科省は指導要領の改定で学習内容を減らし、「ゆとり教育」と強い批判を受けた過去がある。そのトラウマがあるのかもしれない。しかし、学ぶ子どもたちも吸収力には限界がある。詰め込み過ぎた影響が出ないか気がかりだ。

 新指導要領は小学校で3年後に全面実施となるが、その準備の進み具合も気になる。英語を専門に学んだ経験を持つ小学校教師がどれだけいるだろうか。また、児童主体の授業を進めるには、これまでの発想を変え、授業研究や研修を重ねる必要があるが、どれだけできているだろうか。

 県内でも唐津市のアクティブ・ラーニングや武雄市の反転授業などの取り組みがあるが、まだ一部の自治体の動きにすぎない。

 子どもの主体性を育てるには発言機会を増やすことが求められるが、「40人学級」の大所帯でできるのか疑問が残る。この教育改革を成功させるためには現場の教師増は必要だし、行政による予算面の支援も欠かせない。

 ただでさえ、現場の教師たちは日々の生活指導や休日返上の部活動指導などで疲労感が漂う。教育は理想を持つことで変革ができるが、現場に達成困難な目標を押しつけるだけなら、しわ寄せは子どもたちに向かう。(日高勉)

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