内閣改造後の記者会見で安倍晋三首相が国民の不信解消に向けて強調した「謙虚に、丁寧に」という言葉とは真反対の対応だった。

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報隠蔽(いんぺい)問題を巡る閉会中審査が衆参両院の委員会で実施された。しかし組織的な隠蔽への当時の稲田朋美防衛相の関与の有無が問われているのにもかかわらず、与党側は稲田氏の参考人招致を認めなかった。首相も出席しなかった。

 防衛省の防衛監察本部が実施した特別防衛監察は稲田氏の関与に関してあいまいな記述になっている。だが野党側の質問に対して監察本部の担当者は「関係者の証言があやふやで発言が特定できなかった」と従来の説明を繰り返し、防衛省幹部も明確な答弁を避けた。

 小野寺五典防衛相は稲田氏に日報データを報告した際のやりとりが記されたとされるメモや、陸上自衛隊がまとめた内部調査結果の公表、国会提出を拒否した。

 国民への説明責任を尽くそうという真摯(しんし)な姿勢は全く示されなかった。自衛隊という実力組織の活動には、文民統制がきちんと機能しているという国民の信頼が不可欠だ。内閣支持率の下落を受けた安倍政権の「低姿勢」がうわべだけのものならば、信頼回復には程遠いと言わざるを得ない。

 日報問題に関する特別防衛監察が認定した経緯の概要はこうだ。まず昨年7月に作成した日報に関する同月の情報公開請求に対し、開示対象外とするのが望ましいとして陸自が不開示とした。さらに12月には「陸自で廃棄済み」として不開示を決定。今年に入って陸自で保管されていることが判明したが、当時の黒江哲郎事務次官が公表する必要はないと判断した。

 稲田氏の関与に関して監察結果は、2月の報告の際に陸自の日報データ保管について「何らかの発言があった可能性は否定できない」としながら、同時に「書面を用いた報告や、非公表の了解を求める報告がされた事実はなかった」とした。

 あいまいな記述であり、「口頭での報告」はあったのかとの疑問が生じる。その疑問点を明確にするのが国会の責務だ。関係者の証言が食い違うのならば、稲田氏の説明を聞くのは当然だろう。

 自民党の森山裕国対委員長は「特別監察という非常に重いところで調査した以上のものはない」と稲田氏の招致を拒否した。だが監察本部は防衛相の下に設置されるもので防衛相自身は調査対象ではない。調査の在り方自体が不適切であり、第三者機関などでの再調査が求められる。

 日報の隠蔽問題が深刻なのは、極めて重要な政策決定に関係するからだ。昨年7月に南スーダンの首都ジュバで起きた政府軍と反政府勢力の激しい紛争を日報は「戦闘」と記録していた。しかし首相や稲田氏らは「衝突」と言い換えてPKO派遣を継続してきた。

 安倍政権は昨年3月に施行された安全保障関連法に基づく新たな任務「駆け付け警護」の付与を検討していた。開示請求に対して「戦闘」と記述した日報が公開されれば、PKO派遣5原則に照らして派遣が継続できなくなった可能性がある。

 安倍政権は昨年11月に新任務付与を決定したが、派遣を継続して安保関連法の実績をつくるため日報隠しの配慮が陸自内で働いた疑念が拭えない。(共同通信・川上高志)

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