■生活習慣でリスク軽減

 2014年度から医療費は40兆円を超え、今後ますます増加の一途をたどると考えられています。このままでは医療費によって私たちの生活自体が脅かされる時代が来てしまいます。

 最近、健康体重の維持、定期的な運動、植物性食品の積極的摂取そして節酒を含む国際団体のがん予防ガイドラインを守ることにより、がん全体の発生率が10~45%、全がんによる死亡が14~61%減少したことが、発表されました。

 この結果は、がんという、いつかかるか分からない病気であっても健康的な生活習慣を自己管理することにより、減らすことができることを示しています。自身の努力によりがんの危険性を減らせるかもしれないという、うれしい結果ではありますが、もしがんにかかった場合、自己管理を行ってきた人と、そうでない人を差別化しようという考えが欧米を中心に進んでいます。

 例えば、しっかりがん予防ガイドラインを守った人は医療費を安くするとか、逆に喫煙や健康管理の十分でない方の場合は負担が大きくなる、という時代が近づいています。また、がんにかかりやすい体質であることが分かっている方の場合には、より厳密な健康生活の自己管理をすることが求められます。健康保険の分野ではこのような病気にかかる危険度を予測して保険料を設定することは当たり前になっています。

 日本の文化や習慣にはなじまないように思えるこの差別化も、がんで苦しむ方を減らすという観点からみると必要な面もあります。たとえ一人で自己管理をすることは難しくても、家族全体や地域全体での取り組みであればできることも増えてきます。また、その地域にあった食生活や生活習慣の自己管理方法もあるかもしれません。

 これ以上の医療費の増加を防ぐためにも、健康的な生活習慣を地域全体で見直す時期がきているのではないでしょうか。

 (佐賀大医学部附属病院 検査部長・末岡榮三朗)

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