介護実習中の馬場京花さん。「勉強で調べ物をするとき、スマホで検索することも多い」と話す=佐賀市の佐賀女子短大

鉄工所で働く末次宏吉さんは「帰宅後の友人とのスマホでのやりとりがいい息抜き」と話した=多久市南多久町の坂田鉄工所

■スマホで維持する関係

 人とつながりやすい半面、衝突も起きやすい-。佐賀女子短期大学1年の馬場京花さん(19)はスマホでコミュニケーションを取っていて、そう感じる。

 友人がLINE(ライン)に書き込んだ内容を巡り、口げんかのような激しい応酬になった経験がある。

 「あのときの態度、嫌だった」

 「あんたも同じじゃん」

 仲直りはできたものの、後味の悪さは残った。「顔を合わせていたら、何てことないやりとりなのに」

 心地よさを求め、ネット上でも築いてきた人間関係。その中にも、返信の催促を含めて、いらだつ瞬間はある。「行き違いがあれば、対面よりこじれやすい。ネットはこんなものだと割り切るしかないのかな」。衝突したら気持ちを整理し、言葉を尽くしてやりとりをする-。対面のとき以上に費やす関係修復のやりとりがある。

 ネット上では、こうして関係を保とうと努める若者ばかりではないようだ。

 15~29歳の男女3千人に電通総研が2015年に実施したインターネット調査では、8割以上にLINEやツイッターが浸透していた。つながっているグループは平均七つ。一方で、整理したいと思っているグループも二つあるという回答が目立った。さまざまなグループと関わる一方で、54・7%が「人間関係をリセットしたくなることがある」と答えていた。

 「スマホを使いこなす若い世代は、人間関係が選択的になっている」。LINEによるコミュニケーショントラブルなどを研究する佐賀大学教育学部の若本純子准教授(53)=発達心理学=はこう指摘する。「嫌だと思う人とはできるだけ距離を置き、趣味のつながりとか大切な友人とか、望むところとだけ熱心に付き合う傾向が強まっている」

 こうした限定的な人間関係は「居心地がいい半面、性格や価値観が異なる人たちへの耐性はできにくい」とみている。

 大人になれば、就職先で企業風土に合わせることが求められがちだ。それまで人間関係を選ぶ傾向にあった若者にとっては、好みを超えて付き合う状況は負担にもなり得る。早期離職の多さは、こうした人間関係の持ち方とも無関係ではないのだろう。

 スマホのコミュニケーションツールは、不特定多数との関係を広げるだけでなく、小中高時代の友達付き合いを保ち続ける道具でもある。印刷された住所録を繰るまでもなく、アカウント(登録名)などを交換していれば、関わりはそのまま延長する。

 多久市の鉄工所で働く末次宏吉さん(19)=神埼市=は20年ぶりの新入社員。同期入社はおらず年齢が近い社員もいない。

 日中は建設現場での鉄筋の組み立てや、工場での溶接作業に携わっている。危険が伴う現場で、安全への配慮が足りないと叱られることもしばしばある。「仕事中は緊張気味。だから帰宅してからの友達との会話はいい息抜き」。スマホへの書き込みは欠かさない。

 小中学校時代からの仲間5人とは2日に1回は連絡を取り合う。「休みの日はすべて遊びで埋まるし、今の生活に満足している。積極的に新しい友達をつくろうってのはないかな」

 少子高齢化で人口減少が進む地域社会。そんな中、末次さんのような日常の積み重ねは、地元への愛着を深め、とどまる動機にもつながっているのだろうか。

 「年末年始の休み、どうすごそうか」。末次さんはいつもの仲間とスマホを介して計画を練っている。

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