先々週の土曜日、支社からの転送電話が入った。発信者番号は「非通知」。応答すると「原発で何か起きていますか。救急車やパトカーがサイレンを鳴らして行き来してて…」。不安げな女性の声だった。

 その日は原子力防災相が玄海原発を視察に訪れる日だった。ただ警護はしても、救急車が出動するはずはない。詳しい様子を聞くうち、朝方、救急出動メールが入っていたことを思い出した。玄海原発に近い外津漁港内で発生した水難事故で、その旨を伝えた。

 女性は「原発じゃないんですね」と少しほっとしながら、「原発で何かあったら逃げるしかない。サイレンには敏感なんです」。

 玄海原発3、4号機の再稼働をめぐる知事の最終判断が迫るなか、取材心がもたげてくる。名字と年齢、地区名は教えてくれた。しかし電話番号などそれ以上は無理という。

 「原発のことを心配しただけで色眼鏡で見られるんです。すみません」。そう言って電話は切れた。

 女性は「原電」という言葉を何度か使った。「原発」という呼称に負のニュアンスを案じるからだろうか。電力供給に向けて動き出した町でサイレンにおびえ、声を潜めて暮らす人がいる。(唐津支社長・吉木正彦)

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