大規模地震のすさまじさを痛感させられた4月の熊本地震以降、地域の防災の要となる消防団の役割の大きさが、あらためて注目されている。地震発生直後の混乱の中、熊本県の団員たちは素早い動きで命の危険にあった住民を救出し、交通整理や防犯活動にも奔走した。火災はもちろん、地震や風水害に直面した時、やはり頼りになるのは地域の消防団だろう。佐賀県は消防団の組織率が全国トップである。熊本地震を教訓とし、住民同士で助け合う共助の精神をさらに磨き上げたい。

 「村の消防団、生き埋め7人救う」-。4月16日の本震後に報じられた熊本県西原村の消防団の活躍を伝える記事の見出しである。地元のことを熟知している団員たちは、家屋のほとんどが全壊状態となった地区内を1軒ずつ回り、住民を救い出した。まさに日ごろの訓練のたまものであり、全国の消防関係者も「よくやった」と胸を熱くしたことだろう。

 佐賀県消防防災課によると、県内の消防団員は1万9310人(4月1日現在)。人口千人当たりの団員数は22・92人で、昨年度の組織率は全国トップだった。県民の一人として誇らしく、歴代関係者の努力のおかげと思うが、このような県内においても、消防団の維持に苦心する地域が徐々に増えつつあるのも現実である。

 背景にあるのは、人口減少や少子高齢化など社会構造の変化だ。農業など第1次産業の従事者が減り、サラリーマンが増える中、消防団に入る若手は減少傾向で、県全体の団員数はここ10年で千人以上減っている。危機感を抱いた県は、市町や県消防協会と連携し、新聞のキャンペーンなどを含めた大規模な消防団員確保対策事業を2年前から推進している。

 その効果は少しずつ現れてきている。若手の加入のほか、小城市役所では、手薄になりがちな平日昼間の時間帯を守りたいと、団員OBの職員ら22人による消防団が4月に発足。基山町役場でも団員OBの職員が支援団員として活動を再開した。女性団員の加入も進み、現在446人。県全体の総団員数は前年から27人増え、7年ぶりに増加に転じている。

 以前、県東部地区の消防団を取材したことがあるが、団員の頑張りに頭が下がる思いだった。訪ねたのは日曜の早朝で、汗だくになって器具の点検に励んでいた。夏の操法大会に向けた訓練や年末の巡回も。地域の安心安全を支えているという強い自負を感じた。

 国も自主防災の重要性を認識しており、消防団を地域防災の中核と位置づける「地域防災力の充実強化に関する法律」を3年前に施行。退職の際の報償金を引き上げるなど支援を強めている。

 ことし県内では、消防団活動の盛り上げに向けて大きな取り組みもある。法律の施行を機に始まり3年目となる「地域防災力充実強化大会」が10月28日、全国から千人以上の消防関係者の参加を得て佐賀市で開かれる。県内では昨年、女性消防団員の全国大会も開いており、組織率日本一を誇る佐賀県から2年続けて全国に情報発信できることは有意義で、今後の活動推進にもつながるだろう。

 佐賀県民の誇りは、地域のつながりの強さである。10月の全国大会を助け合いの精神を育み広げる機会にしたい。(杉原孝幸)

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