シリアでの取材を計画し、外務省から旅券返納命令を受けた新潟市のフリーカメラマン杉本祐一さん(60)が、憲法が保障する「渡航の自由」や「報道の自由」を侵害しているとして命令の取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は19日、命令は適法と判断し、請求を棄却した。

 判決によると、過激派組織「イスラム国」(IS)による邦人人質事件の直後だった2015年2月、外務省は、トルコに近いシリアの町を取材する計画だった杉本さんに対し、生命に危険が及ぶ恐れが高いとして旅券の返納を命じた。

 古田孝夫裁判長は「渡航の自由は公共の福祉のために制約を受ける」と指摘。その上で「当時、ISは邦人2人を殺害したとする映像を公開し、今後も邦人を殺害すると表明していた。原告が精緻な情報収集をし、危険性を分析していたとも認められず、渡航を中止させた外相の判断は合理的だ」と判断した。

 さらに「命を賭してでも取材を遂げようとする姿勢は崇高だが、憲法がいかなる場合も国民の生命よりも報道の自由を優先しているわけではない」と述べた。

 杉本さんは、返納後に新たに発給された旅券にシリアとイラクへの渡航制限が付いたことも違憲と主張したが、退けられた。(共同)

このエントリーをはてなブックマークに追加