金彩やプラチナ彩を背景に施した豪華絢爛な作風が特徴=武雄市山内町の金龍窯

花瓶に色を入れる江口天童さん。花鳥図を参考にデザインし、有田焼本来の伝統美も意識する=武雄市山内町の金龍窯

■金彩が生み出す伝統美

 きらびやかな金彩やプラチナ彩を背景に、桜やボタンなど四季折々の花々が自らの色の美しさを主張する。武雄市山内町の金龍窯で絵付けを手掛ける江口天童さん(63)=本名・勝久=は「金や銀を生かし、どれだけ絵を華やかに演出できるか。バランスが難しい」。有田の伝統美を守りつつ、新たな芸術性を模索している。

 有田町生まれ。中学卒業時に紹介された地元の窯元で働きながら、有田工高定時制デザイン科で学んだ。卒業後は「一度は都会に出てみたい」と千葉と大阪で2年間、ほかの仕事も経験。その後、有田の窯元に誘われ、「今度こそ真剣に向き合おう」と再び焼き物の世界へ。先輩の仕事を見ながら技術を磨いた。

 1980年代に入ると、大きく豪華な雰囲気の焼き物が売れる時代になった。「自分もいつかは大物に挑戦してみたい」。そんなことを考えていた時、別の窯元から「うちで大物をやってみないか」と誘われた。それまで食器が中心で大物は経験がなく、不安も大きかったが、迷いを振り切って飛び込んだ。「描くサイズが一気に大きくなり、最初は戸惑いもあった」。他社の作品や明治期の有田焼の名品などを研究。試行錯誤を続けたが、5年ほどしてその窯元が倒産する不運に見舞われた。

 金龍窯から声が掛かったのは、そんなタイミングだった。当時から金龍窯は豪華絢爛(ごうかけんらん)な作風が特徴で、大物が多かった。再び技術を生かせる場を得て、より真剣に作品と向き合い、2000年には下絵付けで伝統工芸士の認定を受けた。

 不景気で、大物の芸術品がなかなか売れない。手掛ける作品の半分が陶板画だという。割れが生じやすい大物の陶板画は生地作りから気が抜けず、改良を重ねる。絵付けも「こうすれば良かったと後で気づくことも多く、本当に満足できたことは少ない」。釉薬の使い方で金彩の表現方法を多様にするなど、技術面でも進化を続ける。

 作品の世界観を広げようと、美術展に出かけたり、花の写真を撮ったり、デザインのヒントを探す。「お客様は満足できる作品しか買ってくれない。そのためには日々勉強」。思いは修業時代と変わらない。

 えぐち・てんどう(本名・かつひさ) 1952年、有田町生まれ。有田工高定時制デザイン科卒。有田町内の窯元を経て、1998年に金龍窯入社。2000年に伝統工芸士(下絵付け)認定。会社は武雄市山内町宮野347、電話0954(45)3438。

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