天皇陛下のビデオメッセージのテレビ放送に見入る人たち=8日午後3時3分、佐賀市のエディオン佐賀本店

 生前退位への思いをにじませた天皇陛下のビデオメッセージが報じられた8日、佐賀県内からは発言の真意や背景を推し量る声が聞かれた。ご高齢の身を案じて意向に理解を示す意見が相次ぐ一方、日本国や国民統合の「象徴」からの問い掛けに戸惑う人や、関連法制の改定を巡る論議の曲折を予想する人もいた。

 「お体への不安は相当なものなのでしょう」。唐津市水産業活性化支援センターの村山孝行センター長(63)は天皇陛下のメッセージを聞いてこう感じた。皇后陛下とともに「全国豊かな海づくり大会」で県玄海栽培漁業協会を視察された際に懇談して10年。衰えへの懸念を率直に語る姿に「生前退位の制度があってもいいのでは」と気遣う。

 陛下は各地への旅を通し、「国民と共にある自覚」を育てる必要を感じてきたと語った。海づくり大会の会場だった旧東与賀町の元町長石丸義弘さん(72)は「全国の人々が、このお言葉に共感しているのではないか」と話し、国民的な議論に発展する素地は既にあるとみている。

 サイパン、パラオ、フィリピン…。陛下は平和を希求した戦後日本の象徴として、アジア・太平洋戦争の激戦地へ慰霊の旅も続けた。西太平洋のミクロネシア・ヤップ島で終戦を迎えた出進さん(95)=唐津市肥前町=は「昭和天皇の戦争を巡る責任や反省の気持ちをくみ、責任感のある行動をしていただいた」と受け止め、ねぎらうように続けた。「今度は国民が気持ちをくまないと」

 事前に意向が漏れ伝わり、今回の発言につながったことに疑問を感じる人もいる。佐賀市の自営業中溝一雄さん(75)は「なぜこの時期なのか、唐突な印象もある」。陛下の真意とは別に、政治的な思惑に引きずられないか懸念する。

 発言のタイミングについて自営業嬉野敏彦さん(48)=佐賀市=は「原爆の日や終戦記念日があるから、8月を象徴的に選ばれたのではないか」と推測する。ただ、生前退位の実現については「皇室典範の改定というハードルがある。保守的な人たちもいて、簡単には進まないのでは」。

 平成生まれの短大生佐々木優喜さん(20)=佐賀市=は「昭和天皇が亡くなるとき、自粛ムードが広がったと母から聞いた。そうならないようにという配慮もあるのかな」と想像する。若い世代にとって天皇は「夫婦で仲良くテレビに映っている姿を見て育ち、自然に親しみを感じてきた存在」といい、「元号が代わってしまうのは寂しいけれど、退位を望まれているなら仕方がない」と話す。

 天皇陛下の「お気持ち」表明を巡っては、国政への関与を禁じた憲法第4条に反するという指摘もある。

 佐賀大学の児玉弘准教授(32)=公法=は「お気持ち」が国民への呼び掛けで結ばれていることに注目した。「政治家や内閣ではなく、国民に向けた言葉とすることで4条に抵触しないと考えることはできる。いずれにしても苦心された文章」と評する。「天皇の呼び掛けに対し、国民は幅広い議論で応えないと、今回の『お気持ち』の趣旨は生かされないのではないか」と話す。

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