経済産業省は、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)について、最終処分用地としての適性を示した地図「科学的特性マップ」を公表した。用地選定に向けた第一歩だろうが、まずは国民の理解、コンセンサスづくりに力を尽くすべきだ。

 核のごみは、原発の使用済み核燃料からウランやプルトニウムを取り出す再処理の過程で出る。国は地下300メートルよりも深い岩盤に埋め、放射線量が下がる数万年から約10万年先まで隔離して処分する方針を打ち出している。

 その処分用地の適性を示したマップでは、「活断層の周辺」「火山から15キロ以内」「地温が高い」「軟弱な地盤」などの基準に一つでも該当する地域は「好ましくない」と分類した。「好ましい」は全てに該当しない地域で、このうち海岸から約20キロ以内の沿岸部を「輸送面でも好ましい」とした。

 佐賀県内は、県東部から中部にかけての市町などが「輸送面でも好ましい」地域に入っている。九州電力玄海原発が立地する東松浦郡玄海町は、石炭が埋蔵されているとして、好ましくない地域に分類された。

 輸送面を含め、高い適性があるとされた地域は日本列島の海岸線をなぞるように国土の約3割を占めている。マップは用地選定の出発点となるが、これだけ広範囲の地域からどのようにして候補地を選んでいくのか。慎重に進めなければ、物議を醸すだけに終わりかねない。

 国は2015年、自治体から名乗りを上げてもらう方式を改め、国が科学的な有望地を示した上で複数の候補地を選定する方針を明らかにした。マップ公表を機に候補地の絞り込みに向けた動きが本格化するのだろうが、マップ作成の基準を疑問視する専門家もいる。拙速に候補地を挙げるのではなく、科学的に不確かな点を含め、最終処分の必要性や処分の方法など、基本的な事項から丁寧に説明していく必要がある。

 核のごみの最終処分は原発稼働の賛否にかかわらず、避けて通れない直面する課題である。悠長に構えてはいられないが、理解が広がらないままに具体化しようとすれば、住民の反対、対立を生み、混乱を繰り返すことになる。最終処分の必要性が社会全体で共有され、解決しなければならない課題として受け止める機運づくりができるかどうかが重要だろう。

 今後は適性の高い地域を中心に説明会を開くなどして、理解促進を図っていく。その際、安全性を強調するばかりでは国民の信頼は得られない。福島第1原発事故で原発の“安全神話”が崩壊した中、原発に関わる施策を進めるにはリスクについても率直に示す姿勢が欠かせない。原発政策を進めてきた国と電力会社は核のごみの発生責任を負っており、最大限の努力が求められる。

 最終処分ができるまでには複数の候補地に調査を申し入れた後、文献調査、ボーリング調査、精密調査と、20年程度はかかるとされる。さらに、地域の同意を得て建設するのに10年程度を要する。長期的な事業であり、その間も原発の稼働に比例して使用済み核燃料は増える。エネルギー基本計画の改定に向けた協議が始まったが、核のごみの処分も念頭に置いて考えていきたい。(大隈知彦)

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