北朝鮮のさらなる挑発行動の阻止と朝鮮半島の非核化に向け、日米韓に中国、ロシア両国を加えた5カ国の連携をどう構築するかが重要な鍵となる。平和的解決を目指して外交努力を続けたい。

 「東方経済フォーラム」出席のためロシア極東ウラジオストクを訪問した安倍晋三首相は、韓国の文在寅大統領、ロシアのプーチン大統領と相次いで会談した。

 日韓首脳会談では核・ミサイル開発を強行する北朝鮮に対して、日米韓3カ国の連携を強化し、国連安全保障理事会での、より強力な制裁決議の採択を目指すことを確認した。ただ日ロ間では対話による解決を重視するプーチン氏との認識の違いが浮き彫りになった。

 安保理では、北朝鮮への石油禁輸や金正恩朝鮮労働党委員長の資産凍結などを盛り込んだ制裁決議の原案を米国が提示している。

 日ロ首脳会談では「国際社会全体で最大限の圧力をかけることが重要」との認識で一致した。だがプーチン氏はこれに先立つ討論会で「軍事圧力は何も生み出さない。外交手段こそが唯一の正しい方法だ」と述べており、認識の違いは明確だ。安保理協議にロシアや中国がどう対応するのかが焦点となろう。

 日韓会談でも北朝鮮への圧力強化という方針では一致したものの、両国の基本姿勢には微妙な違いもある。首相は「対話のための対話は意味がない」との認識で、北朝鮮の行動は「これまでにない深刻かつ重大な脅威」と強調、「異次元の圧力」の必要性を主張した。

 文氏は「国際社会と協力して制裁と圧力を最大限に加える」と述べ、圧力強化の方針を示しながらも、「究極的には平和的方法で解決したい」とも言及した。朝鮮半島での一層の緊張激化は避けたいとの立場だろう。

 日本側としても軍事力行使が最悪の事態であることに変わりはない。圧力から対話へとつなげていく道筋を誤らないよう、日韓で情報と認識を共有し、対処方針を協議していくべきだ。米国のトランプ政権に対しても、北朝鮮の挑発に乗る軍事的行動や、逆に北朝鮮の核保有を認めて日韓の頭越しの交渉に踏み込むことのないよう働き掛けていく必要がある。

 気になるのは、北朝鮮の挑発に反応して米軍核兵器の配備の検討を主張する声が日韓両国内で出ていることだ。

 韓国では国防相が1990年代に在韓米軍から撤去されたとする戦術核兵器の再配備を「検討しなければならない」と発言。日本では石破茂元自民党幹事長が米軍核兵器の国内配備の是非を議論すべきだとの考えを示した。両政府は検討を否定している。地域の非核化に反するものであり、認められないのは当然だ。

 日韓両国間の課題では、植民地支配の時代に日本企業での労働を強いられた「徴用工」の補償問題などが取り上げられた。首相は徴用工問題について65年の日韓請求権協定で「解決済み」とする日本政府の立場を伝達。慰安婦問題でも2015年の日韓合意の着実な実施を求め、「未来志向の新たな関係を共に築きたい」と強調した。

 これに対して文氏も韓国側の立場を説明したという。歴史認識に絡む問題は、丁寧に対話を重ね、相互理解を深めながら対処する必要がある。両政府ともに真摯(しんし)に向き合う姿勢が求められよう。(共同通信・川上高志)

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