「空は限りなく青く高く、夜には満天の星がきらめき、地にはそれまで管制されていた家々の灯がともって、自由に生きるとは、これほど清々(すがすが)しく、心ときめくものかと、涙がにじむほど嬉(うれ)しく感じたものです」。作家の城山三郎さん(1927~2007年)が記す1945(昭和20)年の8月15日だ◆突き抜けるような解放感に満たされたことだろう。城山さんが純粋に信じていた軍隊に裏切られた故の実感だった。軍国少年で17歳にして海軍に志願。しかし入隊してみると早朝から夜ふけまで、棍棒(こんぼう)を振り回す下士官や士官たち◆それも罰すべきものを罰するというのではなく、ただ狂ったように、部下を殴りつけるだけ。幹部だけがいい思いをし、下の者は虫けら扱いだった。不条理の極みが戦争だ◆戦後の価値観の激変が作家の原点となった。どんな人でも同じ高さの地面の上に立つ風通しの良い理想の社会に向けて、気概を失ってはならないと繰り返し訴えている。そして「戦争で得たものは憲法9条だけだ」と吐露した(『城山三郎が娘に語った戦争』)◆きょうは終戦の日。「改憲など論外」と言っていた城山さんは、今、この国の向かう先を見たならば憂いの底に沈んでしまうことだろう。なぜ不戦なのか。多くの命が失われたあの時代と向き合うことで、答えが見えてくる。(章)

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