■白紙委任ではありません

 衆院解散・総選挙のうわさは今のところ聞こえてこないが今年、佐賀県内では市町の首長選が続いている。ただ住民に最も身近なこの選挙で気掛かりなことが起こっている。無投票が目立ってきたのだ。すでに終わった6市町のうち1月の白石町、3月のみやき町、今月3日告示された多久市でも選挙戦は実質行われなかった。10月に任期満了を迎える県都の佐賀市も、現時点で現職しか立候補を表明していない。

 市町の首長選は有権者が4年に1度、自ら暮らすまちづくりを考える重要な機会となる。財政状況はどうなのか、政策や事業は身の丈に合っているのか、まちづくりの方向は間違っていないか。審判を受けるのはリーダーだけではない。予算を執行する行政職員も、いったん立ち止まり住民の声に耳を傾けることは民主主義の基本といえる。

 みやき町長選で、3回連続の無投票を知った住民(50代女性)は「現職の取り組みを否定するわけではないが、行政の風通しをよくするためにも選挙はしてほしかった」と残念がった。まさに本音だと思う。

 6選を果たした多久市の横尾俊彦市長(61)は、佐賀新聞のインタビューで「無投票に終わったことで、むしろ市民の期待を重く受け止めている」と応じたが、無投票は決して白紙委任ではない。それは本人も承知した上での発言だろうが、サイレントマジョリティーを掘り起こし、真の「民意」をくみとることに努力を惜しまないでほしい。

 佐賀市長選は告示(10月8日)まであと1カ月に迫ってきた。無投票となれば1979年以来、実に38年ぶりである。現職の秀島敏行氏(75)は6月、バイオマス事業の継続や佐賀駅周辺整備、オスプレイの調整役などを掲げ4選出馬を表明した。

 このうちバイオマス事業は8月下旬、二酸化炭素(CO2)売却収入が、見込みを大幅に下回っていたことが議会に報告された。当初目標764万円のわずか3%、24万円にとどまっていたのである。この数字は佐賀新聞社が今年4月に開示請求した際には、売却先の企業活動に影響が及ぶ恐れがあるなどとして黒塗りにされていた。

 事業には今後、新たに約18億円をかける予定で、市下水浄化センターでは別のバイオマス事業も進んでおり約34億円を投じるという。低炭素社会の実現に貢献するとはいえ事業自体の妥当性はどうなのだろう。いったんは非開示とした市の判断を、市民がどう感じているのかも気になる。選挙になれば賛否の意見が列挙され、腰を据えて考えることができた。

 もちろん無投票自体は現職が何ら責任を負うものではないし、最後まで新人の立候補を期待する。ただ、この現実に対し手をこまねくわけにはいかない。佐賀新聞は紙面を通し、さまざまな角度から問題点を提起、告示までに秀島市政12年間の検証を進める。さらにバイオマス事業はじめ佐賀駅周辺の再整備、経済・産業の活性化など喫緊の課題について50の質問をぶつけ、リーダーの考えを読者に提供していく。期待してほしい。(編集局長 澤野善文)

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