伊万里市で確認された戦後の引き揚げ資料を引き継ぎ、研究を進める三輪宗弘教授=福岡市の九州大学

 伊万里市の旧商店跡で見つかった戦後の引き揚げ資料の調査を、九州大学の記録資料館(福岡市東区)が進めている。伊万里市教育委員会から調査を引き継いだ研究者は、引き揚げ者の苦難に加え、旧満州(中国東北部)などに入植した人たちの経済活動や、戦後の生活再建の手だてを知る手掛かりになるとみており、約2年かけて分析する。

 書類は、伊万里市の中心商店街にある旧「伊万里マート」で2年前に確認された。海外に残してきた財産の補償を国に求めた申請書類の控えとみられている。

 専門的な分析をするため、記録資料館の三輪宗弘教授(58)=経営史、軍事史=らが5月に搬出した。かびを防ぐ薫蒸処理を関係機関の協力で施し、これから本格的な研究に入る。

 書類には、渡航年月や引き揚げ時の上陸地と日付、家族構成、逃避行の概要などが記載されている。終戦時の住所は旧満州に加え、朝鮮半島や台湾などさまざまで、職業も旧満鉄職員や官吏、商店経営者と多岐にわたっている。

 三輪教授は入植先の賃金に関するデータや帰国後の職業の記述にも着目し、資産形成から裸一貫の戦後の歩み出しまで「引き揚げ者の経済的な足跡をたどる手掛かりにもなる」と力を込める。

 奉天(現在の中国遼寧省瀋陽市)から引き揚げ、2014年に閉鎖された伊万里マートに最後まで出店した吉原誠さん(75)は「書類には引き揚げ者一人一人の物語が刻まれている。社会的に忘れ去られることなく、研究という形で光が当たることはうれしい」と語る。

 三輪教授は、戦時体験者が減少し、直接的な証言が得られにくくなっている中での資料の価値を強調する。「体験者が所有する写真や回想録と、今回のような裏付けとなる資料を結び付けることで一層、戦時下や引き揚げ時の実相に迫ることができるのではないか」と話している。

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