県人権擁護委員連合会理事、元小学校長 牟田恭子

■世を直視するための新聞 鋭い感性が読者を磨く

 「今だけ、金だけ、自分だけ。三だけ主義では生きられない。他者への関心を深め、世の中のことを傍観しないことが大切」。7月1日付有明抄の一節である。まさしく参院選に向けてのプロローグである。

 英国のEU離脱に関する国民投票は関係諸国に大きな衝撃を与えたが、後の国民の動揺や離脱派代表ジョンソン氏の党首選不出馬など、一票の重さ、リーダーとしての責任のありようを考えさせ、参院選直前の我々へもタイムリーな課題、示唆となった。

 今参院選から選挙権が18歳まで引き下げられ、まさに歴史的選挙だけに、投票についての意識高揚のための記事が連日掲載され、新聞社の情報収集力、分析力に敬服した。

 選挙後、佐賀大生を対象にしたアンケート調査の詳報(17日付)で、新聞から情報を得た学生が選挙前より4ポイントの伸びを見せたのは、体験と情報の共有効果と思われる。

 これまでのアンケートをはじめ、貴重な資料、記事を今後も主権教育の学習教材として学校現場で利用すれば、さらに多くの教師と生徒が現実を捉えた授業展開が期待できるのではないだろうか。県教委との連携がほしいところである。

 さかのぼって投開票翌日の11日、第1面の全幅白抜き見出し「改憲勢力3分の2超」は、投票の中核をなす読者の注目ポイントで、結果の重さと展望への揺らぎを意味していた。6日付の党別予想とほぼ票数は変わらず、的確な読みに驚いた。続発した各国のテロ、クーデター、中国領海問題など、国民と国を守るすべを考えざるを得ない世界情勢の今日。新聞の鋭い感性による正確な情報収集、予知能力がさらに求められる。

 さて、県立学校教育情報システムへの不正アクセス事件が起きた。佐賀県のICT推進施策は全国でも有名だが、半面、学校現場も様変わりをした。

 昼休みも児童と教師の共遊光景は見当たらず、職員同士の情報交流もさほど見当たらなくなった。寸時を惜しんでパソコンに向かう姿が悲しい。一人で悩む教師、仲間に入れない子どもが生じるのは当然だ。事件を起こした無職少年もいじめや不登校を経験したという。液晶画面には児童生徒の心は映らない。ICT教育も世界の波に乗るには重要だが、教育の原点を確認するためにも、事件の背後に潜む教育的課題にも目を向けてほしい。

 最後に、唐津市長献金問題である。8日付の記者解説では政治倫理審査会に一度は欠席し、再要請に応じて出席した市長への後手対応に鋭い矢が放たれた。他市在住の友人いわく、「唐津市民は優しいのか、アンテナがさびているのか」と。冒頭の有明抄の「三だけ主義」は市町の衰退につながる。研ぎ澄まされた感性で世を直視しよう。それには新聞の役割が大であり、鋭い感性ある記事は読者の感性研磨に必ずやつながることを信じたい。=7月分=(むた・きょうこ、唐津市)

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