8歳のころ性暴力の被害に遭い、実名で講演活動をしている工藤千恵さん=4日、大分市

◆24時間対応、相談員確保課題 

 レイプなどの性暴力に遭った被害者が治療や相談などの総合支援を1カ所で受けられる「ワンストップ支援センター」が、全ての都道府県に整備される見通しになった。今年1月末時点でセンターがあるのは佐賀を含む36都道府県に上り、政府が2017年度から創設する交付金が後押しとなって未整備の11県も開設を検討していることが18日、共同通信の調査で分かった。

 一方で、心身に深い傷を負った被害者に対応できる相談員や財源が足りないと訴える自治体は多く、さらなる制度充実が求められている。

 心身に深い傷を残し「魂の殺人」と呼ばれる性暴力。警察に相談できずに苦しむ被害者を受け止め、支援するワンストップセンターの全国整備に国がようやく本腰を入れ始めた。「つらい」と打ち明けられる場が各地にできれば、被害者の救いにつながるが、24時間対応できる体制整備、相談員の精神面のサポートといった課題は多い。

▽9カ月で225件

 「『つらい』と言える場所をやっと見つけた」。長崎県が2016年4月に開設した「性暴力被害者支援サポートながさき」には、強制わいせつやレイプに遭った被害者から相談が寄せられる。

 場所は犯罪被害者支援センターの一角。年に十数件だった性暴力の相談は、ワンストップセンターを開設後、16年末までの9カ月間で延べ225件に増えた。木下達夫事務局長は「ここまで急増するとは思わなかった。専門機関と、性暴力被害に関する知識のある相談員は必要だ」と話す。

 だが現在、相談員は女性1人で、電話相談対応は平日午前9時半から午後5時だけ。被害者の希望に応じて時には直接会って話を聴き、弁護士や心療内科医につなぐ。木下事務局長は「24時間体制にしたいが、地方では人材や費用の確保がより難しい」と打ち明ける。

 14年から千葉医療センターを拠点に支援活動をする「千葉性暴力被害支援センターちさと」では昼間の相談対応のほか、緊急医療支援が必要な人は24時間受け入れている。相談員が話を聴き、必要に応じて医師が性感染症検査や加害者を特定するための証拠採取、緊急避妊の処置などをする。

▽交付金創設

 千葉市の助成金や寄付で賄う年間の運営費は200万~300万円。財政は厳しく、相談員はわずかな謝礼で活動するボランティアだ。

 人が足りず、夜間は病院の当直を兼務する産婦人科医が直接電話を受けることもある。産婦人科医の大川玲子理事長は「安定した運営をするためには、国や自治体からの継続的な財政支援が欠かせない」と強調した。

 8歳のころ、見知らぬ男から性暴力の被害に遭い、実名で講演活動をしている大分県の工藤千恵さん(44)は「施設が整ってきた今、携わる相談員のケアにも目を向けてほしい」と話す。性暴力被害者の多くは自分を責め、心身の回復には長い時間がかかるため、寄り添う相談員のストレスも大きいという。

 工藤さんはフラッシュバックによる過呼吸や対人恐怖症に悩まされ、自分を取り戻すまでに20年以上かかった。「ただでさえ人材が不足する中、ストレスで体調を崩して辞めていく相談員は多い。国には、相談員も含めて総合的にケアする仕組みを構築してほしい」と訴えた。

 性暴力に詳しい雪田樹理弁護士は「交付金の創設で、各自治体がワンストップセンターの整備に取り組みやすくなる」と意義を語る一方で、相談体制の整備やスタッフ確保などは自治体任せになっていることが多いと指摘。「全国どこでも同じ水準でサポートできる体制を構築するためには、国が性暴力被害者支援法といった根拠法を制定すべきだ」と話した。

 佐賀県には性暴力救援センター・さが(さがmirai)が2012年7月から設置され、医療的、精神的支援に取り組んでいる。

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